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草わかば
くさわかば
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「日本現代文學全集 22 土井晩翠・薄田泣菫・蒲原有明・伊良子清白・横瀬夜雨集」 講談社
1968(昭和43)年5月19日
入力者広橋はやみ
校正者岡村和彦
公開 / 更新2016-02-03 / 2015-12-24
長さの目安約 16 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

やさしきこころのうちに愛のひそむは、森のみどり葉がくれに鳥のすむに似たりといふなるに、このはかなき草わかばのかげにはいまだ夢さそふにほひもなきがごとく、わが調に慣れぬ胸のおもひは、色をも彩をもなしあへぬをいかにせむ。

春の歌


歡樂ふかくもえいづる
香を慕ふにも草嫩
細き葉がくれ身をよせて
羞ぢてひそめる花の影

羞ぢてかくるるさまながら
花はほがひのよそほひや
空には夢のたはぶれの
紅こそ淡くかかるなれ

唇を解く歌の君
春のたくみの手は高く
夕にはまた彩を織る
光は雲にながれけり

日神頌歌


いのちのねざしうるほへば
ここなる花もかをるなり
文布織ります羽槌雄の
神の高機しののめに
いろあやとくもととなひて
影かすかなり星の梭

雲はいと濃き紫に
うすくれなゐの糸をぬき
高野路夢の花罌粟の
つぼみひらくる曙や
げにかぎりなきよそほひの
榮あふぐこそゆかしけれ

いとものふりし冬の夜の
幽宮のまゆごもり
もぬけいでては天の原
春の霞のもろつばさ
まだかよわげに見ゆれども
おほはぬ空もなかりけり。

夜の闇消えてゆく空に
見よ白鳩の羽を矧ぎて
にほふ桂の眞鹿兒矢の
生矢千箭の靱を負ひ
日女の神は春かへる
かの稚宮にいでましぬ

御統の玉おとたかく
天にきこえて曉の
星の光のゆらぐ時
この世なやめる人の身も
こごえし靈もやはらかき
春の日影にむかへかし

をりこそよけれ常世なる
甘き菓の新釀
碼瑙の谿にしたたれば
わきほとばしる白泡の
にほふがごとくみなぎりて
光さしそふ日のみ神

ああうるはしき日[#挿絵]貴
まだ天地のわかくして
影清かりし朝ぼらけ
遠き光を身にしめて
誰か高市に神集ふ
神のみ聲をこの日傳へむ

をとめごころ


手にふれたまふことなかれ
うれしき君とおもへども
まだうらわかき野の花は
熱き情の日にたへじ

ゆめふれたまふことなかれ
いといともろきわが胸に
激浪たちて白珠の
涙くだかばつらからむ

ただふれたまふことなかれ
祕めてぞ清き戀なるを
もしかかる夜に罪やどる
星墜ちゆかばいかにせむ

新譜


其一

おもふに夢に

おもふに夢に誰かわが
手にふれたりや知らぬまに
空はかすめる夢としも
げに春はこそいふべけれ

知らですごしぬこの日まで
その祕めごとを歡樂を
さあれ知りてはやすからず
ああわが胸のいつになく

おもふに誰かめづらしき
たよりを夢に傳へけむ
かしこよりとしたのむにも
あやなく雲ぞかすみたる

嗚呼さばかりに何ゆゑに
あくがるるわがおもひぞや
微草よなれもゆかしげに
もゆるは何の夢ごこち

おもふに春にいづこより
遠き調の傳ふとも
幽かなるべき絃にだに
うらわかみこそ觸れもすれ

色し慕へどわりなくも
香をし戀ふれどさながらに
されば少女のわがこころ
寤めてかつひに夢みてか

其二

野路よりひとり

野ぢより…

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