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文学に現れたる東北地方の地方色
ぶんがくにあらわれたるとうほくちほうのちほうしょく
副題(仙台放送局放送原稿)
(せんだいほうそうきょくほうそうげんこう)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「佐左木俊郎選集」 英宝社
1984(昭和59)年4月14日
初出「文学に現れたる東北地方の地方色」仙台放送局、1932(昭和7)年8月28午後6時30分~午後7時
入力者田中敬三
校正者林幸雄
公開 / 更新2009-04-24 / 2014-09-21
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は常に東北地方を愛している者であります。私は(日本中でどこが一番好きか?)という質問に対して、いつも(東北地方)と答えるのに躊躇したことはありません。これは話者の私が東北人であるための身贔負でもなく、聴者の皆さん方が東北人であるからお世辞を申し上げるわけでもありませんのでして、私の偽らざる感想なのであります。然らば(何故そんなに東北地方が好きか?)と申されますと、これは理窟ではなく感情なのでありますから寔に困るのでありますが、私は何故か、優秀な文芸作品から受けると同じような、熱情的なものや、素朴なものや、思考的なものや、真実なものや、純情的なものなどの、陰影を感じさせられるからであります。明朗とか軽快とか――近頃の流行のモダンとかシックとか――いうようなものは、元より求むべくもありませんが、明朗であるよりも暗鬱である方が、軽快であるよりも鈍重である方が、さらに遙かに芸術的陰影を深めているという観点からいたしましても、東北地方は、日本中のどこよりも、私の気持ちに融合するのであります。
 東北地方の地方色が、文芸作品によって紹介されましたのは、極く最近のことでありまして、東北地方を目標としての最も古い文学である芭蕉の『奥の細道』にいたしましても、僅かに二百四十年ばかり、徳川中期のことであります。それも、あのような紀行記ではあり、芭蕉の主観があまりに勝ち過ぎていて、地方色が出ているとは言い難いのであります。遠く『日本書紀』や『万葉集』や『古今集』などにも、既に東北地方は紹介されてはいるのでありますが、それは記録としてであり、感想としてでありまして、本当に東北地方の地方色の紹介されましたのは、やはり、明治以降というべきであります。

 併し、古い時代の伝説や説話などにも、既に東北地方の東北地方らしい雰囲気――いかにも東北地方らしい味わい――というようなものが出ていまして、それが現代文学の上に縦に繋がっているということは、興味深いことであります。
 東北地方のそういう記録、伝記、昔話などのうちで、就中、黄金に関するものや、産馬に関するものや、馬鹿聟に関する話など、現代文学に繋がるもののうちでは最も面白いもののようでありますが、黄金に就いては「黄金花咲くみちのくの……」というような歌もありますように、昔の人達は、東北地方をば自然金の産地のように思っていたようであります。黄金産出のことを記録してある最も古いものは『続日本紀』であろうと思いますが、それによりますと、聖武天皇の天平二十一年の二月、百済の王敬福という者が、今の、宮城県遠田郡涌谷村字黄金迫の黄金神社附近から、黄金を獲って朝廷に献じたのが、日本で黄金の発見された最初のようであります。今年から千百八十四年前のことであります。このとき、天皇は大いに嘉尚し給い、幣を奉じて畿内七道の諸社に告げ、……尋で東大寺に行幸、盧…

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