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米国巡回文庫起源及び発達
べいこくじゅんかいぶんこきげんおよびはったつ
作品ID46211
著者佐野 友三郎
文字遣い新字新仮名
底本 「個人別図書館論選集 佐野友三郎」 日本図書館協会
1981(昭和56)年9月7日
初出「秋田県教育会雑誌 第一一五号」1902(明治35)年2月
入力者鈴木厚司
校正者小林繁雄
公開 / 更新2007-12-31 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

明年度より秋田図書館においては巡回文庫を開始し、大館(既設)及び能代、大曲、横手(未設)の四郡立図書館に各弐百円を県税より補助せらるることとなりたれば、秋田図書館は、巡回文庫の駐在所を得べく、郡立図書館は、巡回文庫によりて図書の供給を得べく、彼此相待て地方の知識開発上、その益少からざるべし。殊に巡回文庫は、未だ本邦に例なきが故に、今、当事者の調査したる米国巡回文庫中の一節を抄録して、本誌に収めて読者の参考に供す

 一、米国において図書館令を発布したるは、ニユーヨーク州をもって始めとす。千八百三十五年、同州の発布したる同令中には、各小学区は、文庫購入のため、初年度において二十ドル以内、及び、その書函に要する相当の経費を、また次年度よりは、年額十ドル以内を支出することを得る旨の一項あり。千八百七十二年には、更に、市税または町税をもって、無料図書館を設くることを得と規定し、その後州立図書館と市町村立(以下公立と称す)図書館との間に連絡を通し、千八百九十二年以来、学校補助費三万ドルに対し、公立図書館には、毎館二百ドルの割合をもって、年額二万五千ドル(五万円)を補助することとなれり。その補助条件の大要は左のごとし。
一、補助を受けんとする図書館は、州の監督の下に認可図書館として登記を受くべし。
二、図書は、館内において閲覧する場合にも、館外携出の場合にも、公衆に対し、一切無料たるべし。
三、所在地人口の割合に応じ、開館日時数を規定すべし。
四、補助金は、各図書館とも一年二百ドルとす。
五、所在市町村においては、補助金と同額を負担すべく、参考図書館の場合には、倍額を負担すべし。
六、前記金額は、専ら州の認定を経たる図書の購入に充つべし。
 かくのごとくにして、従来の公立図書館は、俄かにその面目を一新し州立図書館よりは請求に応じ、巡回文庫によりて、たえず、有益なる図書を供給し、公立図書館自体もまた、年々四百ドル(参考図書館の場合には六百ドル)の新著を購入し得て、公衆の読書興味を喚起したれば、更に町村いたるところに、公立図書館の新設を促し、ここに州立図書館は、大学拡張(ユニヴアーシテイ、エキステンシヨン)と相待て、学校外教育の至要機関となり、町村における新知識の源泉となれり。
二、米国文庫が、公立図書館と相待て発達し、相待てその用を完くしつつあること、前項既述のごとし。斯道の先達たるニユーヨーク州立図書館長メルヴイル・デユーイ氏いわく、不動公立図書館を各町村に普及せしむるは、固より望ましき限りなれども、選択、その宜しきを得たる巡回文庫により、地方在住者をして最良の図書より得らるべき娯楽と利益とのいかに多大なるかを了解せしめ、これによりてまず図書館に興味を喚起し、図書館の必要を感ぜしむるにしくはなし。
 今、巡回文庫の起源を案するに、千八百八十五年、英国「オツクスフオード」…

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