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日記
にっき
副題02 一九一四年(大正三年)
02 せんきゅうひゃくじゅうよねん(たいしょうさんねん)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第二十三巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年5月20日
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2010-04-17 / 2014-09-21
長さの目安約 37 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

〔大正三年予定行事〕
 一月、「蘆笛」、「千世子」完成

〔一月行事予記〕
「蘆笛」、「千世子」完成
 To a sky-Lark 訳、
「猟人日記」、「希臘神話」熟読
「錦木」

一月一日(木曜)晴 寒
〔摘要〕四方拝出席
 四方拝出席、午後例の如し。
 十六と呼ばれなければならないそうだとでも云わなくっちゃあならないほど今日は私にとって不思議な妙てこなものである。きのうと今日と三時間ほどねたばっかりで私は十六になり今までより以上に改良もし進歩もしなくっちゃあならないかと思うと急に私の肩が重くなった様に思われる。口だけでない覚悟をしなければならない私は意味のあるよろこびと微笑とをもって居る幸福だ! 私は自分の心のそこでささやく。

一月二日(金曜)晴 寒
〔摘要〕古橋氏、芝祖母君[#西村千賀子、母方の祖母]、来訪
    「リヤ王」、「埋もれた青春」、「伯爵令嬢」
 らちもない只嬉しい気持で一日を送った。「リヤ王」を読む。「リヤ王」やその忠臣孝子の間には日本式な孔子の教のつたわってでも居そうな純な感じの好い感情がみなぎって居る日本の史劇の様な――こんな事も思われる。
「埋もれた青春」、その一つ一つに特別な感じと思いをうける、私にはそんなにはなされないほどのものではないけれ共一番始めにある埋れた春の幼い二人の子供の気持には落椿のはかなさといぬはりこの色の様に平凡なものでありながらはなれがたいなつかしみをうけた。「伯爵令嬢」まだ世の中をそんなに知らない私に四方を見廻させる力をもって居る。

一月三日(土曜)晴 暖、風
〔摘要〕小田切、松岡、徳岡文蔵、久米正雄、古橋氏来訪
 久方振りに来た人達は女のいそがしいのも迷惑なのも忘れて又そんな事なんか考えもしないでさわぎ散らして居た。文蔵が帰ると間もなく文科の久米さんが来る、夜は古橋さん、トランプをしたあと新らしい女について又今の文学等について一時半まで話し合った。芸術と云う小さなかこいの中ほか見ないほど真面目と云うよりも、夢中になって久米さんは芸術を愛して居る人だ、相当に考えのある人と言う事は間違いない、今夜は私は大変に考えなければならなかった。文学は純文学として価値のあるものがいいかそれとも多方面から批難のないものがいいのか、大よそは分って居るが考えなければならない。

一月四日(日曜)晴 暖
〔摘要〕三越行 松野夫婦来訪
    「青い鳥」を読む、細井氏令嬢の悲報をうける、女鴨の死
 眼覚めるとすぐ私はめすの鴨の死んだのを知った。一声もなかずに只白い眼を時にあけて遠くに歩く自分の夫を見ながら死んで行った鴨の運命に云いがたい感じを私はうけた。午後三越に行った、緋の裾を絹足袋のつま先にさばいて人群をすりぬける事は真に快い物であった。帰ると細井さんのお娘さんがなくなったと云う知らせをうけた、阿母さんが死んで年の順に二人…

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