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国立国会図書館
こくりつこっかいとしょかん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」 てんびん社
1972(昭和47)年11月20日
初出「婦人公論」1950(昭和25)年4月
入力者鈴木厚司
校正者染川隆俊
公開 / 更新2006-12-13 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 戦後の春、こんなところにと思われる爆撃の跡に、一杯に青草が生えて来た。
 自然にとって戦争なんて、一つの物理的現象にしかすぎなかったのかとつくづく驚かされた。しかし、文化というか、十万年の人間の発生史の目指した大きな方向も決して、この五千年の歴史の制度のみに左右されてはいない。自然のこころに似た大きな広い流れが歴史の底にも流れている。
 アレクサンダーが戦を起して、多くの人々が印度とイラン地方の砂の中に骨をうずめたが、その間にも、文化のいとなみは、自然のそれの如く、その歩みを止めなかった。東西の文化はあの時一つの流れの中にとらえられ、高きものは低きものへと水圧のそれのように世界の文化の面の上に拡がった。アレクサンドリア図書館はその一つの記念塔である。それはピラミッドよりももっと大きなものを魂の中にうち立てた。後の新プラトン哲学以後の哲学の泉の源として、巨大な役割を果たしたのである。
 国立国会図書館も、長い目で見れば、遠い東のアレクサンドリア図書館なのである。この図書館はヴィジョン(夢)の中に生まれ出でている。昭和二十二年十二月十七日、衆議院議長サロンでアメリカ図書館使節クラップ、ブラウン両氏と、両院図書館運営委員会メンバーの合同打合会の議事録を見るとき、その思いを深くするのである。これまで、法律は日本では内閣で原案ができて、議員はこれに協賛していたのであるが、今度は議会が自分の力で法律を国会図書館の立法調査部の力を借りて、法律案を打立ててゆくという大きなギアの切替えが、一つの夢(これはあたりまえの事ではあるが)として、ブラウン氏から説かれている。
 更に日本全国の図書館にある本の全体の見透しをカードでもってわかるようにする綜合目録の作成、これはすでにアメリカの国会図書館がしていることであるが、これを日本で遂行しようというのである。これはまさしく大いなる夢である。今わが館は二十五年計画でこのプランの第一コースに入っている。そのためにはすぐに役に立たない、目に見えないコツコツと働く仕事が、どんなに積み重ねられなければならないか想像がつかないのである。さらにこれはアメリカにも未だないのであるが、各省に国立国会図書館の支部図書館をつくって、本の交換貸借、資料の流通、綜合目録の完成等々、立法がバラバラにならないように、セクショナリズムの鉄の窓をいかに破るかの夢が課せられたのである。
 全国の納本をわが館で一手に引受けて、その全国の文献のリストを完成すること、やがては分類のカードを印刷して、それを全国の図書館に安価に、できれば無償で配付することもすでに軌道に乗っている夢の道である。その他語られたヴィジョンは多かったのである。もちろんそれはアメリカではそれは現実なのである。しかし、その一つ一つが日本では夢にすぎなかったのである。かくしてその夢の種は、戦後の矛盾に満ちた…

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