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ポオとルヴェル
ポオとルヴェル
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「探偵クラブ 人工心臓」 国書刊行会
1994(平成6)年9月20日
初出「新青年」博文館、1925(大正14)年夏季増刊号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2007-10-25 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私の一番好きな探偵小説は、短篇ではやはりポオとルヴェルである。ポオの作品のうち、探偵ヂュパンの出て来る三つの物語は勿論であるが、その外に、
The Black Cat.
The Cask of Amontillado.
The Fall of the House of Usher.
The Gold-Bug.
Hop-Frog.
Mesmeric Revelation.
The Oblong Box.
The Masque of Red Death.
The Premature Burial.
System of Dr. Tarr and Professor Fether.
The Tell-Tale Heart.
"Thou art the man."
など、いつ読んでも、読むたんびに新らしい感興が湧く。System of Dr. Tarr and Prof. Fether. の最後の部分の狂者たちの行動の描写に至っては、面白いというよりも自然と頭がさがるのを覚える。いずれ私は「犯罪文学研究」の中に、私のポオ論を書くつもりであるが、私はいつもポオより後の時代に生れたことを喜んでいるのである。
 ルヴェルの作品では、今一々数えあげるの煩を避けるが、一つとしてうれしくないものはない。私はルヴェルの書くような小説を自分でも書いて見たいという年来の希望であるが、彼の作品を読むと、自分自身の筆があまりに見すぼらしくなって、穴へでもはいりたくなるくらいである。
 次に短篇ではチェスタトンが好きである。最もチェスタトンの英語は、どういうものかポオの英語のように、私に迫って来ない。これは勿論私の英語の力が足らぬためでもあろうから「不足」はいえぬが、とにかく、師父ブラウンの出て来る短篇と The man who knew too much. に収められた作品は、何ともいえぬ、いい味がある。
 次には、ダヴィソン・ポーストやビーストンの作品が、私にとって頗るうれしいものである。ビーストンの作品を読むときは、一たいこんどは作者がどういう「オチ」をつけるだろうかと少なからぬ好奇心にかられる。そしていつも終りに至って一ぱい喰わされる。だまされて喜ぶなんて、探偵小説の愛読者なんかになるものではないなどと考えながらも、やはり引きつけられてしまう。
 英国に居る時分、私はドイルとフリーマンの作品に気狂いになっていたが、近頃はあまり読まない。しかし、嫌いになった訳ではなくて、みんな内容を知っているからである。(ポオやルヴェルは内容を知っておっても読まずにおられない。)シャーロック・ホームズの冒険、記念、帰国の三集に収められた物語のプロットにはいつも感心する。この三集だけは、当分のうちは探偵小説界にその燦然たる光を失わないであろう。
 私は軽いユーモアに充ちた作品よりも、いわば凄みを帯んだ…

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