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鵙征伐
もずせいばつ
作品ID46706
著者夢野 久作
文字遣い新字新仮名
底本 「夢野久作全集7」 三一書房
1970(昭和45)年1月31日
初出「九州日報」1925(大正14)年10月7日
入力者川山隆
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-08-14 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 お父さんの蛙が田圃へ虫とりに行ったまま帰って来ませんので、お神さんの蛙と子供の蛙が心配をして探しに行きましたら、かわいそうにお父さん蛙は鵙に捕えられて茅の刈り株に突き刺されて日干になって死んでいました。
 これは鵙が冬食べ物がなくなった時食べようと思って仕舞って置いたのです。
 母蛙と子蛙は抱き合って泣きました。泣く泣くお父さんのカラカラの死骸を荷ってつぶれた蓮の葉のお寺に担ぎ込んで、親類や友達蛙が寄ってたかってお念仏をしてお葬いを済ましました。
 そこへ一匹の雀が通りかかって、お前達は何をしているかと尋ねました。蛙どもがわけを話しますと、雀は肩を怒らして申しました。
「大体、あの鵙という奴は高い処へ止まってキイキイ威張った憎い奴だ。よし俺が仇を取ってやるから泣くな泣くな」
 と言って飛んで行きました。
 雀は友達を大勢集めて評議をしましたが、やがて八方に飛び散って鳥さしを探しました。鳥さしが見つかると雀どもは大勢連れ立って鳥さしの前をチューチュー啼きながら飛び回りました。鳥さしは、止まったと思って近付くと、パッと逃げます。又近付くとパッと逃げる。こうして深いドブの処まで誘って来ますと、案の定鳥さしは夢中になってドブの中に落ちました。その時に取り落したモチ棹を雀どもは寄ってたかって引っ啣えて山の方へ飛んで来て、いつも鵙が来る木のてっぺんに立てかけて置きました。
 何にも知らぬ鵙はいつもの通り遠方からキイキイ啼きながら飛んで来ていつも止まる木の一番高い処に止まりますと、コハ如何に、足がピタリと吸い付きました。大変だと思って飛び立つと、今度は羽根がモチにからまってしまいました。
「キイキイキイキイ助けてくれ」
 と一所懸命もがいておる処へ、最前ドブに落ちた鳥さしがモチ棹を追っかけて来てこの様子を見ると、
「雀が鵙を取ってくれた」
 と喜んで鵙の首をキュットひねって袋に入れてモチ棹を担いで帰って行きました。



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