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書簡
しょかん
副題家族・親族宛
かぞく・しんぞくあて
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「定本原民喜全集Ⅲ」 青土社
1978(昭和53)年11月30日
入力者砂場清隆
校正者土屋隆
公開 / 更新2006-04-10 / 2014-09-18
長さの目安約 32 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

●昭和十一年四月三十日 千葉市登戸より 村岡敏(末弟・当時明治大学ホッケー部に在籍し、ベルリンオリンピックに代表として派遣された)宛
今朝早くから女房が起すのである それから一日中オリンピツクのことを云つて女房は浮かれ たうたう我慢が出来ないと云ふので速達を出すといふのである 大変芽出度いこととワシも思ふのである この上は身躰に注意し晴れの榮冠を擔つてかへつて來い 原家一同それを望んでやまないのである

四月丗日
 村岡敏君万才



●昭和十一年六月三十日 千葉市登戸より ベルリン在 村岡敏宛
拜啓 シベリア鉄道は長い長い蛇体でしたか 日本では「忘れちやいやよ」といふレコードが發賣禁止になり 男お定が出沒して居ります 千葉は梅雨で眼の赤い氣球がゆらゆら搖れて居ります 柳町の叔父さんはこの間下関まで君を見送り帰りに秋吉の鐘乳洞を見物したさうです 善次郎君はこの夏は北海道旅行をする由です 北海道もビイルはうまいといふ話だがドイツのビイルはどんなにかうまいことかと想像します ドイツで飲むからうまいらしい さて代表軍の元氣は盛ですか この間東京出發の際は少し痩れて居たやうだが 長の旅路のこと故 勢と自愛が肝要ですぞ デエトリツヒのやうな女どもが右往左往して居る伯林 ナチスのナスビ鬚 それから柳町ではまた遠からず芽出度いことがあるさうです 草々
杞憂
六月丗日
村岡敏君
追伸 千葉の小犬は大分娘らしくなりました 今年の暮頃には子を産むかもしれないといふ噂です



●昭和十一年七月十五日 千葉市登戸より ベルリン在 村岡敏宛
拜啓 先日はドイツ軍と試合して勝つた由 芽出度い どしどし勝つて全勝して帰り給へ そうすると大変都合がいいから是非お願ひしておく 今日はうらぼんで籔入りで松竹少女歌劇も勝てオリンピツクとかいふオペラをやつて居る やつと梅雨が晴れて千葉も暑くなり蚊がブンブンブンブンブンブン啼く ベルリンには蚊が居るかしらん身躰を大事にして元気で暮し給へ
 七月十五日
杞憂
 村岡敏君※[#判読不可。「尓(に)」あるいは「与(よ)」か?]



●昭和十一年七月二十四日 千葉市登戸より ベルリン在 村岡敏宛
暑中御伺申上候サテサテ日本軍は勝ちましたか 城谷では十一月に赤ん坊が生れるそうです 伯林でもう少しはサインして貰ひましたか 伯林の女學生がサインしておくんねえと強請りはしまへんか 今日は颱風が吹いて居て昨日長崎沖で軍艦が搖れて沈みかけた アア防空演習で東京はマツクロケノケだそうだ アルプス登山の四勇士はあへなく倒れたそうですね 千葉の小犬には近所の不良犬がぞろぞろと押しかけて來ます それこそ選りどりみどりだと申し居り候
御健勝を祈る
草々
村岡敏君
七月廿四日



●昭和十三年頃 旅先の箱根から 千葉市登戸二の一〇七 妻の原貞恵宛
 さつきまで霧だつたが、…

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