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ディカーニカ近郷夜話 前篇
ディカーニカきんごうやわ ぜんぺん
副題02 はしがき
02 はしがき
著者
翻訳者平井 肇
文字遣い新字旧仮名
底本 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」 岩波文庫、岩波書店
1937(昭和12)年7月30日
入力者oterudon
校正者伊藤時也
公開 / 更新2009-08-27 / 2014-09-21
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

『まつたくこれは奇態な本だ、[#挿絵]ディカーニカ近郷夜話[#挿絵]か? いつたい[#挿絵]夜話[#挿絵]とはなんだらう? 何処かの蜜蜂飼かなんかがこんなものを世間へ発行しをつて! お蔭さまなことだよ! 羽根ペンを拵らへるのにどれだけ鵞鳥を裸かにし、紙を漉くのにどれだけ襤褸くづをつかつたら堪能ができるのだらう! 貴賤の別なく猫や杓子までが見やう見真似で、やたら無性に墨汁へ指を突つこんでも突つこんでも、まだ足りないのだ! あげくの果てには、こんなどこの馬の骨とも分らない蜜蜂飼風情までが、柄にもなく変な野心をおこすのだ! まつたく、かう碌でもない活版刷の反古ばかり矢鱈に殖えた日には、一体これをなんの包み紙につかつたものやら、おいそれと考へつくことも出来やしない。』
 かういつた横槍が飛び出すだらうとは、もう一と月も前から、ちやんと感づいてゐたことなんで! いや、まつたくこちとらのやうな田舎ものにとつては、この井の中から世間さまへ顔を突きだすといふことが――どうもはや!――よくある奴で、ちやうど立派な旦那がたのお邸へ戸惑ひして足をふんごんだのと頓とひとつで、人々がぐるりをとりまいて直ぐにからかひだす。それも奥むきの奉公人ででもあらうことか――ぼろぼろの服装をして裏庭で土いぢりでもしてゐさうな小穢ならしい小僧つ児までがいつしよになつて、四方八方から足を踏みならしながら、がなりだす。『何処へのこのこと迷ひこんで来やがるのだ? いつたい何をしに来やがつたんだ? さあ出て行け、このどん百姓めが、とつとと出てうせやあがれ!』つてんで……実際の話だが……。いや、何も言ふがものはない! まつたく、このわしにとつては、広い世間さまへ顔出しをするよりは、年に二度*ミルゴロドへ出むく方がよつぽど安易なんで、ところが、そのミルゴロドの地方裁判所の監督書記にも、あすこの偉い和尚にも、もう五年このかた頓と会はないやうな次第でな。――したが、いつたん顔を出したからには、泣いても笑つても一通りの弁疏はしておかずばなるまいて。
ミルゴロド 小露西亜ポルタワ県下の小都会。ドニェープルの支流ホロール河の沿岸に位し、『ディカーニカ近郷夜話』に次いでゴーゴリが書いた著作集『ミルゴロド』は、この地名を採つて標題としたのである。
 さて、親愛なる読者諸子よ、――いや飛んでもないことを申して御免なされ、(若しかしたら、こんな蜜蜂飼風情があなた方にむかつて、まるで自分の仲人か教父にでも話しかけるやうな、不躾けな物の言ひ方をするのをさぞかし御立腹になるかもしれませんが)――われわれの部落では昔からのならはしで、野良仕事がすつかり片づくといふと、待つてゐたとばかりに百姓たちは長の冬ぢゆう、のうのうと体を休めるために煖炉の上へ這ひあがり、手前ども同業者仲間はめいめいの蜜蜂を暗い土窖へかこふのぢや。その頃になると、もう…

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