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愚言二十七箇条
ぐげんにじゅうしちかじょう
作品ID47247
著者国枝 史郎
文字遣い新字新仮名
底本 「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」 作品社
2005(平成17)年9月15日
初出「探偵趣味」1926(大正15)年2月
入力者門田裕志
校正者北川松生
公開 / 更新2016-05-04 / 2016-03-04
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 探偵小説の人生は、日常茶碗の人生とは違う。
            ×
 人生に於ける非常事が、探偵小説では茶碗事となる。
            ×
 人生の自然と探偵小説の自然は、似ても似つかないものである。
            ×
 作家に特異性のあることは勿論幸福には相違ない。しかし勝れた探偵小説家は、より一層客観を尊ぶ。
            ×
 ポーが現代へ産れた所で社会性の無いという点で、一蹴されても仕方あるまい。
            ×
 階級の精神を代弁する者が現代と将来の大作家である。
            ×
 表現主義は個人主義である。まごまごすると利己主義に堕する。
            ×
 古典主義に反逆して、浪漫主義が新興し、浪漫主義に反逆して、自然主義が新興し、自然主義に反逆して、人道主義が新興し、人道主義に反逆して、プロレタリア芸術が新興した。反逆も伝統を持っている。
            ×
 面白くない読物とは、真実を描かない読物のことだ。
            ×
 人は他人の罪悪の、暴露を喜ぶものである。何んと新聞の社会面が、多くの人に喜ばれることか。では探偵小説家が、社会の罪悪を剔抉した所で、喜ばれない筈が無い。
            ×
 多数読者の嗜好を探り、その嗜好に投じ乍ら、自己の思想を植え付けることは、作家として最も大切では無いか。決して諂うことでは無い。大衆作家は夫れをしている。
            ×
 読者の嗜好を知るということは、階級思想を知ることである。
            ×
 芸術もだんだん分科的になる。ブルの嗜好とプロの嗜好とが、一致するとは思われない。
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「万魂詩人」というような文字は、今では辞書に無い筈だが。
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 階級的思想を描いた物、「死の爆弾」と「蒼ざめた馬」とゴーリキーの「軍事探偵」……だが併し「軍事探偵」は、まだ大分個人主義的だ。
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 小酒井氏の作の特色は、その筋の単純化にあり、甲賀氏の作の特色は、その筋の複雑性にある。勿論どっちも結構である。
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 人間は「個」としては活きられない。どこ迄も社会の一員なのである。楽に暮らそうと思ったら、社会から改良しなければならない。余は文筆でそれをするのだ。
            ×
 社会改良の一具として、芸術を扱うということは、自然主義時代では嫌われた。だが今日ではそんな事はあるまい。
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 探偵小説には型がある。その型を利用して、余は余の思想を伝えようと思う。
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「純粋な芸術」というような言葉は、可成り滑稽な言葉である。社会的効果を標準にして、芸術の…

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