えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

たけのこ
たけのこ
作品ID4725
著者新美 南吉
文字遣い新字新仮名
底本 「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」 てのり文庫、大日本図書
1988(昭和63)年7月8日
入力者めいこ
校正者もりみつじゅんじ、鈴木厚司
公開 / 更新2003-11-07 / 2014-09-18
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より



 たけのこは はじめ じびたの したに いて、あっち こっちへ くぐって いく もので あります。
 そして、あめが ふった あとなどに ぽこぽこと つちから あたまを だすので あります。
 さて、この おはなしは、まだ その たけのこが じびたの なかに いた ときの ことです。
 たけのこたちは とおくへ いきたがって しようが ないので、おかあさんの たけが、
「そんなに とおくへ いっちゃ いけないよ、やぶの そとに でると うまの あしに ふまれるから」
と しかって おりました。
 しかし、いくら しかられても、ひとつの たけのこは どんどん とおくへ もぐって いくので ありました。
「おまえは なぜ おかあさんの いう ことを きかないの」
と おかあさんの たけが ききました。
「あっちの ほうで うつくしい やさしい こえが わたしを よぶからです」
と その たけのこは こたえました。
「わたしたちには なんにも きこえやしない」
と ほかの たけのこたちは いいました。
「けれど、わたしには きこえます。それは もう なんとも いわれぬ よい こえです」
と その たけのこは いいました。
 そして どんどん はなれて いきました。
 とうとう この たけのこは ほかの たけのこたちと わかれて、かきねの そとに あたまを だして しまいました。
 すると そこへ よこぶえを もった ひとが ちかよって きて、
「おや、おまえは まいごの たけのこだね」
と いいました。
「いえいえ、わたしは、あなたの ふいて いらっしゃった、その ふえの こえが あんまり よかったので、こっちへ さそわれて きました」
と たけのこは こたえました。

 さて、この たけのこは おおきく かたく なった とき、りっぱな よこぶえと なりました。



えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2024 Sato Kazuhiko