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雑草一束
ざっそういっそく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」 作品社
2005(平成17)年9月15日
初出「探偵趣味」1927(昭和2)年11月
入力者門田裕志
校正者北川松生
公開 / 更新2016-05-25 / 2016-03-04
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

「探偵趣味」へも御無沙汰致しました。同人の列につらなり乍らこう御無沙汰をしては申わけありません。そこで雑然たることでも書いて見ることにいたします。

支那の秘密結社

 支那の秘密結社といえば「白蓮会」「三合会」「哥老会」の三つを先ず思い出します。この中白蓮会からは分派として一時「大刀会」「小刀会」「在理教」等の会が出来、その流れが馬賊になったということです。有名な義和団もこの白蓮会の支流の筈です。その起源は非常に遠くて、北胡の侵入時代だと云いますが、ハッキリ白蓮会の名を、世間へ印象させたのは元の順帝の至平十年で、韓山童という人物だそうです。俺は弥勒仏の産れ変わりだと称して愚夫愚婦をまどわしたそうであります。
 次に起こったのが「三合会」で、「清水会」「双力会」などという支流があります。その成立は康煕十三年だそうです。有名な長髪賊の中にも三合会の会員は多数加わって居りまして一大勢力となっていた筈です。三合会の会員全部が是に加わる筈になっていたそうですが、長髪賊の洪秀全の持っている教理と三合会の教理とが相反していたため其事が行われなかったそうです。もし三合会会員全部が加わっていたら長髪賊の勢力はもっと大きくなっていたことと思われます。
 次に起こったのが哥老会で、その起源は乾隆年間であり、盛んになったのは同治年間でその盛んになった原因が一寸面白いのです。と云うのは長髪賊を平げた湘勇の子弟が、戦終わるや衣食に窮して、各自団隊を作りましたが、これが哥老会に合したため盛んになったというのです。長髪賊の中には三合会員があり、それを亡ぼした連中が似たような秘密結社の哥老会に入会したという訳です。そうして三合会と哥老会とは非常に親しいというわけです。
 哥老会に就いて思い出すのは釈元恭という日本の僧侶のことです。
 私の少年時代――小学校時代ですが、この釈元恭という名は一時随分耳にしました。それは日本の僧侶であり乍ら支那の哥老会の一大勢力家であったからです。その当時の単行本に「釈元恭」というものがありました。むずかしい漢文崩しの文章で書いた元恭の伝記でありましたが、私は解らないなりに愛読した記憶があります。その当時の書籍の一体裁として綴じるのに絹糸を以てする綴じ方の本がありましたがその「釈元恭」なる本もそういう体裁を持っていました。内容は大方忘れて了いましたが、たしか日本人で、柔術が上手で、支那の拳法以上に支那に於て有効視されて居ることだの、その柔術を使って支那官憲の包囲を遁がれたというようなことが書かれてあったことぐらいを覚えて居ります。それより何よりハッキリは覚えているのはその本の口絵でした。墨染の法衣を着て鉄のシャク杖を突いて、岩角に立っている姿で、その法衣の袖が背後の方へ翻っていたのが今に眼底にありあり残っています。
 私ばかりで無く私ぐらいの年格好の人の中にはこ…

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