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明治哲学界の回顧
めいじてつがくかいのかいこ
副題01 序論
01 じょろん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「現代日本思想大系  24 哲学思想」 筑摩書房
1965(昭和40)年9月20日
初出「岩波講座哲學 明治哲學界の囘顧」岩波書店、1932(昭和7)年11月
入力者岩澤秀紀
校正者小林繁雄
公開 / 更新2008-07-19 / 2014-09-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

      一

 わが国には古来、神道だの儒教だの仏教の哲学が行なわれておったのであるけれども、西洋文明の輸入とともに別系統の哲学思想が新たに明治年間に起って来た。すなわちそれは西洋の哲学思想に刺戟せられて、わが国においても種々なる哲学的思索を促してきたのである。その結果、伝統的の東洋思想とはおのずから異った哲学思想の潮流を発生するようになってきた次第である。西洋思想の真先に輸入されたのは宗教思想(すなわちクリスト教)であったが、それに次いで医学、化学、物理学、植物学、兵学などが輸入されたのであったけれども、明治の初年に至って、哲学、論理学、心理学など、先覚者のはじめて注意するところとなって、思想界に清新の気運を喚起してきたのである。
 明治初年の思想家で、哲学およびその他精神科学に関係のある主なる人々を挙ぐれば、まず西周を筆頭とし、西村茂樹、加藤弘之、外山正一、中江篤介などであった。しかして自分もその間において哲学、倫理学、心理学等に関する著述または翻訳を発行し、それから宗教その他の思想問題について種々意見を発表したのである。それから自分よりは後輩ではあるが、三宅雄二郎、井上円了、有賀長雄、大西祝、清沢満之、高山林次郎などという人々も哲学思想の興隆には少なからざる関係があったのである。その他福沢諭吉とか中村正直(敬宇と号す)とかいうような人々もけっして無関係とはいわれない。福沢という人は別にこれという哲学的の著書のあるわけでもなく、何ら哲学的思索の形跡は認められないけれども、しかし西洋文明の輸入者として、また広く当時社会の先覚者として思想界に大きな影響を及ぼした人であるからには、哲学史の上から見てもけっして看過することのできない人物であると思う。殊に福沢諭吉と加藤弘之とは当時注意すべき対立的の学者であった。ここにはきわめて大体のことしかいえないが、加藤という人はよほど学究的の性質があって、哲学の問題を最後まで研究し、どこまでもみずから哲学者たらんことを期したので、いやしくも明治時代の哲学を回想するに当ってはどうしても度外視することのできない人物であるが、福沢氏の方はそういう専門的の意味からでなく、広汎なる立場から見て、どうしても見逃すことのできないものがあるのである。殊に英、米の文明思想を率先して輸入し、これに反して儒教のような東洋思想を破壊することを努力した人である。いいかえてみれば、支那文明のような当時なお相当勢力を有しておったものを全然根柢からくつがえしてこれに代うるに英、米の新文明をもってしようと努力したのである。時勢も時勢で、ちょうど攘夷の非なることを覚って一日も早く西洋の長所を学ぼうという社会的要求の切なる際であったからして、福沢の苦心もむなしからず、その効果は意外に洪大となった。昔から「智恵アリトイエドモ勢イニ乗ズルニシカズ」ということがあ…

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