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其中日記
ごちゅうにっき
副題02 (二)
02 (に)
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「山頭火全集 第四巻」 春陽堂書店
1986(昭和61)年8月5日
入力者小林繁雄
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-02-09 / 2014-09-21
長さの目安約 76 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

其中日記は山頭火が山頭火によびかける言葉である。
日記は自画像である、描かれた日記が自画像で、書かれた自画像が日記である。
日記は人間的記録として、最初の文字から最後の文字まで、肉のペンに血のインキをふくませて認められなければならない、そしてその人の生活様式を通じて、その人の生活感情がそのまゝまざ/\と写し出されるならば、そこには芸術的価値が十分にある。
現在の私は、宗教的には仏教の空観を把持し、芸術的には表現主義に立脚してゐることを書き添へて置かなければならない。
[#改ページ]

うららかにして
木の葉ちる


 一月一日

私には私らしい、其中庵には其中庵らしいお正月が来た。
門松や輪飾はめんどうくさいので、裏の山からネコシダを五六本折つてきて壺に[#挿絵]した、これで十分だ、歯朶を活けて、二年生きのびた新年を迎へたのは妙だつた。
お屠蘇は緑平老が、数の子は元寛坊が、そして餅は樹明君が送つてくれた。
いはゆるお正月気分で、敬治君といつしよに飲みあるいた、そして踊りつゞけた、それはシヤレでもなければヂヨウダンでもない、シンケンきはまるシンケイおどりであつた!
踊れ、踊れ、踊れる間は踊れ!
芝川さんが上海からくれた手紙はまことにうれしいものであつた。
・お地蔵さまもお正月のお花
・お正月のからすかあかあ
   樹明君和して曰く
  かあかあからすがふたつ
・シダ活けて五十二の春を迎へた

 一月二日

今夜は樹明君といつしよに飲みあるき踊りつゞけた、あゝ何と酒がうまくて、何と踊のかなしかつたこと!
山手閑居。

 一月三日

今日は樹明君、敬治君と三人で遊んだ、遊びつかれて、夜おそく帰つてきた。
私はひとりで涙を流して笑つた、そしてこん/\として睡つた、天国の夢も地獄の夢も見なかつた。

 一月四日

曇、お正月もすんだ、すべてが流れてゆく。
アルコールのない、同時にウソのない一日だつた。
 茶の花やお正月の雨がしみ/″\
・お正月の鉄鉢を鳴らす
また/\人が来て金の話をしていつた。

 一月五日

雨、寒い、そして静かだ。
夕方、樹明君がきてくれた、そしておとなしく帰つていつた、大出来、々々々。
米がないから餅を食べる。
夜の雨はよかつた、閑寂そのものゝやうだつた。

 一月六日

小寒入、時雨。
雨を聴きつゝ、完全に自分を取り戻した。
△乞食になつて、乞食になりきれないのはみじめだ。
餅もなくなつたから蕎麦の粉を食べる。
今日がほんとうの新年だつた、私にとつては。
しづかなよろこび。
△まづしくともすなほに、さみしくともあたゝかに。
自分に媚びない、だから他人にも媚びない。
気取るな、威張るな、角張るな、逆上せるな。
△腹を立てない事、嘘をいはない事、無駄をしない事。
私は執着を少くするために、まづ骨肉と絶縁する、そしてその最初の手段として音信不通にな…

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