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炎の人――ゴッホ小伝――
ほのおのひと――ゴッホしょうでん――
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「炎の人――ゴッホ小伝――」 而立書房
1989(平成元)年10月31日
入力者門田裕志
校正者伊藤時也
公開 / 更新2009-04-21 / 2014-09-21
長さの目安約 185 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

■登場人物
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
テオドール・ヴァン・ゴッホ
アンリ
ヴェルネ
デニス
老婆
ハンナ
ヨング牧師

シィヌ
ワイセンブルーフ
モーヴ
ルノウ

ペール・タンギイ
その妻
ゴーガン
エミール・ベルナール
ロートレック
ベルト・モリソウ
シニャック
学生
夫婦のお客

ルーラン
ラシェル
看護婦
[#改ページ]

     1 プチ・ワスムの小屋

ドス黒く、貧寒なガランとした室の、裏の窓から差し入る日暮れ前の光の中に、四人の人間が押しだまっている……。

アンリ ……ヴェルネ、もう、なん時ごろだろう?(こわれかけた椅子にかけている。右腕が肩のつけ根からない)
ヴェルネ そうさな……(これは中央の板椅子にかけて、火の消えたパイプをくわえている。窓の方を見て)そろそろ五時半と言うとこかな。
アンリ だって、まだこんなに明るいぞ。
ヴェルネ 天気が良いと、こうだ。これであと二十分として、おてんとさんが、ボタ山の向うに入ると、いきなりバタッと真暗になるやつだ。
アンリ でも、五時の交替のボウは、まだ鳴らねえぜ?
ヴェルネ 二、三日前から、ワイスの奴あ、ボウ鳴らすの、やめてるよ。
アンリ あ、そうだっけ。畜生め、ボウぐらい鳴らしてくれたって罰は当るめえ。
ヴェルネ だけどよ、アンリ、ボウは交替の合図だあ。こうなって、お前、交替もヘッタクレもねえんだから。
アンリ そらそうだけどよ、景気が悪くって、そうでなくても気がめいりそうだからよ。
ヴェルネ 炭車も昇降機も停っちゃってるしな、ボウだけのために釜に火を入れるの無駄だってバリンゲルさんが言ったそうだ。
アンリ ……ちくしょうめ。
デニス たまらねえ! 俺あ、たまらねえ! 俺あ――(これは先程から片隅の床の上にじかに置かれた藁のベッドのはじに腰をおろして、両手で頭をかかえこんでいた男。低い、すすり泣くような声で言いだす)十日前まで、炭車や昇降機はガラガラ、ガラガラ唸ってた、ボウも鳴ってたし、誰かが怒鳴ったり、歌ったりよ(立ちあがってイライラと床の上を歩きだす)……それがよ、こうしてみんな声も出さなくなって、犬も吠えねえんだ。山中がシーンとなってしまって、もう十日だ。
ヴェルネ デニスよ、まあまあ落ちつけ。
デニス ……(ガラリと窓をあける。窓の向うに、黒く静まり返った坑口近くの風景の一部が見える)見ろよ! 人っ子一人歩いてねえ。あんまり静かで、俺あ耳ん中がワンワン、ワンワン言って、気が変になりそうだ。
アンリ そりゃお前、ストライキだから、しかたがねえよ。
デニス だからよ、俺の言うのは、そのストライキがよ、こんなザマで、この先どうなるんだと言ってるんだよ。会社じゃ、俺たちが黙って言うことを聞かないようなら、四坑とも閉鎖すると言ってるし、今となっちゃ、ワスム中の百軒あまりの家で十サンチームと金の有る…

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