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原爆被災時のノート
げんばくひさいじのノート
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本の原爆文学1 原民喜」 ほるぷ出版
1983(昭和58)年8月1日
入力者ジェラスガイ
校正者大野晋
公開 / 更新2002-09-24 / 2014-09-17
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

  八月六日八時半頃

 突如 空襲 一瞬ニシテ 全市街崩壊 便所ニ居テ頭上ニサクレツスル音アリテ 頭ヲ打ツ 次ノ瞬間暗黒騒音
 薄明リノ中ニ見レバ既ニ家ハ壊レ 品物ハ飛散ル 異臭鼻ヲツキ眼ノホトリヨリ出血 恭子ノ姿ヲ認ム マルハダカナレバ服ヲ探ス 上着ハアレドズボンナシ 達野顔面ヲ血マミレニシテ来ル 江崎負傷ヲ訴フ 座敷ノ椽側ニテ持逃ノカバンヲ拾フ 倒レタ楓ノトコロヨリ家屋ヲ 踏越エテ泉邸ノ方ヘ向ヒ 栄橋ノタモトニ出ズ
 道中既ニ火ヲ発セル家々アリ 泉邸ノ竹藪ハ倒レタリ ソノ中ヲ進ミ川上ノ堤ニ至ル 学徒ノ群十数名ト逢フ ココニテ兄ノ姿ヲ認ム 向岸ノ火ハ熾ンナリ
 雷雨アリ川ヲミテハキ気ヲ催ス 人川ハ満潮 玉葱ノ函浮ビ来ル 竜巻オコリ 泉邸ノ樹木空ニ舞ヒ上ル カンサイキ来ルノ虚報アリ 向岸ノ火モ静マリ向岸ニ移ラントスルニ河岸ニハ爆風ニテ重傷セル人 河ニ浸リテ死セル人 惨タル風景ナリ(ココマデ七日東照宮野宿ニテ記ス 以下ハ八幡村ノ二階ニテ)
 筏ヲアヤツリテ向岸ニ渡ル 兵隊アリ重傷シテ肩ヲ借セト云フ 我肩ニヨリテ歩ミツツ 死ンダ方ガマシダト呪フ 湯ヲアタフ 柳町ノネエヤハ火傷シ 桜ヲ抱キテココニノガレ居リタリ 華ハ橋ノタモトニテ別レタリト
 饒津ノ樹ノ時折燃エントスルアリ 砂地ニ潮満チ 堤ニノボル 既ニシテ夜トナル 傷ケル女学生砂地ニ臥セリ アア早ク朝ニナランカナ オ母サント泣キワメク
 水ヲクレ 水ヲト火傷ノ男 夜モスガラ河原ニテワメクアリ オ母サン オネエサン ミツチヤン ト身内ノ名ヲヨブ女ノ負傷者ハ兵隊サン助ケテ 助ケテヨ ト号泣ス 夜ハ寒シ 恭子ト兄トハ黒ノカアテンヲカムリテ睡ムル ワレハイツノマニカネムツテシマツタ 警報アリサ
 翌 七日 兄ト恭子ハ焼跡ヲ廻リ 柳町ノ負傷者ハ東照宮下ニ治療所アレバ出向ク ワレハ傷(砂地ニテ火ヲタキ 飯ヲモラフ)ケル兵隊ヲ一人肩ニ トキハ橋ノトコロマデ行クココニテ兵隊ハ救助車ヲ待ツ
 饒津公園ニ一ケ所水道ノ出ルトコロアリ ビール瓶ニ水ヲクム 東照宮下ニ行ケバ華ガ無事ニ一夜ヲ人ニ保護サレテ居タコトヲ知ル 華モ顔ニ火傷セリ 三原ヨリ医師ノ応援アリテ 施療ス
 路傍ニ臥セル重傷者カギリナシ 頭モ顔モ脹レ上リ 髪ノ毛ハ 帽子ヲ境ニ刈リトラレテ居リ 警防団ノ服ヲ着タ青年石ノ上ニ倒レ 先生 カンゴフサン 誰カ助ケテ下サイト低ク哀願スルアリ 兵隊サン助ケテ トオラブ若キ娘アリ 巡査ハ一々姓名 住所ヲ記入シテ 札ヲ渡ス故行列ハ進マズ 暑シ
 華子ト兄ト原田好子漸ク手当ヲ受ケテ境内ニ帰ルニ 木蔭ラシキモノモナシ 崖ニ材木ヲ渡シテ屋根トシ ソノ下ニ一同潜ム 江崎モコノ時手当ヲ受ケテココニ来ル
 警報アリ 爆音キコユ 握飯一人ニ一個クレル 隣ニハ両手ト足ヲヤラレ 傷ケル男アリ パンツガ半分躯ニクツツキフラフラ 安藤 三四郎ムスビヲ持チテ来ル…

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