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探偵戯曲 仮面の男
たんていぎきょく かめんのおとこ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「平林初之輔探偵小説選Ⅰ〔論創ミステリ叢書1〕」 論創社
2003(平成15)年10月10日
初出「新青年 一〇巻四号」1929(昭和4)年3月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-07-17 / 2014-09-21
長さの目安約 35 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

    人物
青木健作    富豪
久子      青木夫人
芦田義資    警視庁探偵
牧       芦田の腹心の警部補
東山      亜細亜新聞社会部長
書生
正木夫人
島村夫人
塩田夫人
ある富豪
文枝      ある富豪の娘、東山の許嫁
女中
園遊会の客男女多勢、警官多勢

第一幕

 第一場

成金実業家青木邸の主人の居間、室内の家具、装飾等卑俗なくらいにけばけばしい洋室である。主人青木健作は安楽椅子に沈みこんでシガーをふかしている。四十歳前後の、成り上がり者らしいタイプ。幕開くとすぐに左手の扉を開けて夫人久子がはいってくる。二十六七歳位の派手なつくり。ともにふだん着の和服姿である。

 久子――ねえ、あなた、わたしいいことを思いついたわ。(椅子にかける)
 健作――何だい、そんなにあわてて?
 久子――さっきも、あなた仰言ったでしょう、何とかして明日の園遊会を世間にぱっと吹聴させる方法はないものかって。
 健作――そうだせっかく費用をかけて園遊会を開いておきながら、ちっとも世間の話題にならぬようじゃその甲斐がないからね。今どき算盤珠のとれぬ仕事なんざ馬鹿々々しくてやれんからな。
 久子――それについて妾いいことを考えついたの。きっと東京じゅうの新聞が大騒ぎするわ。
 健作――莫迦な。東京の新聞記者は事件には食傷している。我々の園遊会の記事なんざ、どんなに手をまわして運動したって、六号活字で二三行書いてくれるのが関の山だ。
 久子――そりゃただ青木邸で園遊会があったというだけなら、三流新聞の記者だって見向きもしないことは、わかってるわ。
 健作――では、どうするというんだ?
 久子――そこにトリックをつかうんですよ。でもことわっておきますが、それにはあなたに主役をつとめていただかなくちゃならないのよ。
 健作――そりゃ、家のためになることなら、わしも一肌ぬがぬこともない。どうしろというんだね?
 久子――あなた近頃新聞を読んでいらっしゃるわね?
 健作――むろん新聞はよんどる。
 久子――いま東京じゅうの新聞が一番大騒ぎしている事件は何だとお思いになって?
 健作――そうだな、支那問題かな、それとも市会議員の問題かな。
 久子――まだほかにあるわ、社会だねの方に。
 健作――社会だねと言えば、近頃仮面強盗のことで大騒ぎのようじゃないか。しかしそんなことが、お前の話に何か関係があるのかい?
 久子――その仮面強盗をたねに使おうというのですよ。あの強盗は、犯罪をやるときは、いつもおかめの面をかぶってるというんでしょう? そして真っ昼間でもかまわずにどこへでも現れて警視庁の役人を手こずらせているということでしょう? それに盗むものは宝石や貴金属ばかりで、しかも盗まれても別に困らないような人のものだけにしか手を出さぬというんでしょう?
 健作――そうだ…

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