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蟹満寺縁起
かにまんじえんぎ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集」 学研M文庫、学習研究社
2002(平成14)年3月29日
初出「大正演芸」1913(大正2)年2月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2009-01-15 / 2014-09-21
長さの目安約 21 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 登場人物
漆間の翁


里の青年 (坂東三吉)



里のわらべなど
[#改ページ]

          (一)

時代は昔、時候は夏、場所は山城国。久世郡のさびしき村里。舞台の後方はすべて蓮池にて、花もひらき、葉も重なれり。池のほとりには柳の立木あり。

(男女の童三は唄い連れていず。)
唄[#挿絵]蛙釣ろうか、蟹釣ろか、蓮をかぶった蛙を釣ろか、はさみを持った蟹釣ろか。
(三人は池にむかって手をたたきながら、一と調子はりあげて又唄う。)
唄[#挿絵]蛙釣ろか、蟹釣ろか。水にとび込む蛙を釣ろか、穴にかくれた蟹釣ろか。
(わらべ等は唄い終りて、更にはじめの唄をくり返しつつあゆみ去る。水の音しずかにきこゆ。蓮の葉をかき分けて、小さき蛙は頭に大いなる蓮の葉をかぶりておどりいず。)
蛙 ええ、さうぞうしい餓鬼共だ。子供というものはなぜああ騒ぎたいのだろう。いや、そう云えば俺だって子供だ。陰ってあたたかい静かな晩などは、なにか一つ唄ってみたいような気がして、精一ぱいの大きな声を出して、あたり構わずにぎゃあぎゃあ呶鳴ることもあるから、あんまり人間の悪口も云えまいよ。いたずらっ児ももう行ってしまったようだ。おれも一番陽気に唄ってやろうか。
(蛙はあたりを見まわして、唄いながら踊る。)
蛙 人を釣ろうか、こどもを釣ろか。死んだ振して子供を釣ろか。……ああ、面白い、面白い。
(蛙は蓮の葉を地にしきて坐す。柳のかげより大いなる赤き蟹いず。蟹は武装して、鋏のごとき刃をつけたる長刀を携えたり。)
蛙 やあ、蟹の叔父さんだね。
蟹 人間の子供もそうぞうしいが、おまえも随分そうぞうしいな。あけても暮れても騒いでいる。蛙の子は蛙とはよく云ったものだ。おれ達を見習ってちっと黙っていろ。
蛙 蟹の叔父さんのように黙っていると、おらあ病気になってしまうよ。こうして時々に陸へあがって来て、唄ったり踊ったりするのが何よりの楽しみなんだ。
蟹 陸には怖いものがいるのを知らないか。
蛙 人間の子供なんか、怖いものか。あいつ等がつかまえに来れば、おらあすぐに水に飛び込んでしまうから大丈夫だ。
蟹 おまえ達には人間よりももっと怖いものがいるぞ。
蛙 なんだろう。(考える。)むむ。蛇か。
蟹 その蛇だ。蛇は人間よりも足がはやい。木のかげや草のあいだに隠れていて、お前たちの姿を見付けると、不意にするすると駈けて来て、あたまから一と呑みに呑んでしまうぞ。蛇はおまえ達に取っては何よりもおそろしい敵だ。蛇にみこまれたが最後、とても逃がれることは出来ないのだから、そのつもりで用心しろ。
蛙 蛇はそんなに強いかねえ。
蟹 おまえ達よりも確かに強い。
蛙 じゃあ、叔父さんだってかなわないだろう。
蟹 いや、おれはこの通り頑丈な甲で身をかためている。おまけに[#「おまけに」は底本では「おまえに」]こういう鋭い…

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