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紫外線
しがいせん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「小酒井不木探偵小説選 〔論創ミステリ叢書8〕」 論創社
2004(平成16)年7月25日
初出「子供の科学 三巻六号、四巻一~二号」1926(大正15)年7~9月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2010-09-17 / 2014-09-21
長さの目安約 23 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

水銀石英灯

 読者諸君は、塚原俊夫君の取り扱った「紅色ダイヤ」事件というのを記憶していてくださるだろうと思います。その事件を紹介する際、私は俊夫君に金持ちの叔父さんのあることを話しておきましたが、最近俊夫君はこの「赤坂の叔父さん」に実験室の一部を建て増してもらい、そこへ水銀石英灯というものを買ってもらって据えつけたのであります。
 どうして、俊夫君が水銀石英灯を買ってもらったかと言いますと、先日俊夫君は、ある外国の犯罪学に関する雑誌を読んで、近頃外国では犯罪の探偵に水銀石英灯がさかんに使用されるということを知ったからであります。
 そこで、研究好きな俊夫君は、赤坂の叔父さんに頼んだところ、さっそく叔父さんは快諾して実験室を建て増し、器械を買い入れて備えつけてくださったのであります。
 かねて俊夫君はレントゲン線の装置がほしいのでしたけれど、あまりに大袈裟になるゆえ我慢していましたが、水銀石英灯は簡単なものですから、とうとう叔父さんにねだったわけです。

 さてここで皆さんに水銀石英灯がどんなものかということをお話ししておこうと思います。水銀石英灯というのは一口にいえば、紫外線と称する一種の光線を発生する器械なのであります。そこで私はさらにさかのぼって、紫外線が何物であるかということを述べる必要があります。
 皆さんは日光が通常七色の光線から成っていることをご存じであろうと思います。すなわち赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色がこれでありまして、日光光線を分光器で分析しますと、いわゆるスペクトルとなって、これらの美しい色にわかれます。しかし、日光光線には、この七色の光線の他になお眼に見えぬ二種の光線が含まれているのでありまして、通常赤外線、紫外線と呼ばれているのであります。
 赤外線はスペクトルの赤色の外部に位するという意味であり、紫外線とは紫色の外部に位するという意味であります。
 光線は申すまでもなく、光波と称する一種の波でありますが、スペクトルの赤色の方から紫色に向かって漸次その波長が小さくなり、反対に屈折力は大きくなるのであります。そうして赤色の側の光線は温熱的作用を有し、紫色の側の光線は化学的作用を有するのであります。それゆえ赤外線は最も温熱的作用に富み、紫外線は最も化学的作用に富んでいるのであります。
 日光が人間の健康を増進するのは、この紫外線の化学的作用によるものでありますから、フィンセン〔(一八六〇〜一九〇四)〕という人は、紫外線を発生せしめて色々の病気を治そうと企て、いわゆるフィンセン灯なるものを発明したのであります。ところがこのフィンセン灯なるものは装置が少し大袈裟でありますから、後にクローマイエルという人は、もっと簡単に紫外線を発生する装置を考えたのであります。それがすなわち水銀石英灯なるものであります。
 水銀石英灯というのは、…

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