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其中日記
ごちゅうにっき
副題06 (六)
06 (ろく)
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「山頭火全集 第六巻」 春陽堂書店
1987(昭和62)年1月25日
入力者小林繁雄
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-08-07 / 2014-09-21
長さの目安約 80 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   旅日記

□東行記(友と遊ぶ)

□水を味ふ(道中記)

□病床雑記(飯田入院)

□帰庵独臥(雑感)

 三月廿一日 (東行記)

春季皇霊祭、お彼岸の中日、風ふく日。
樹明君から酒を寄越す、T子さんが下物を持つてくる、やがて樹明君もやつてくる。……
出立の因縁が熟し時節が到来した、私は出立しなければならない、いや、出立せずにはゐられなくなつたのだ。
酔歩まんさんとして出かける、岐陽君を訪ねる、酒、さらに呂竹さんを訪ねる、そしてFをSを訪ねて酒。
とう/\出立の時間が経過してしまつたので、庵に戻つて、さらに一夜の名残を惜しんだ。

 三月廿二日 徳山から室積へ。

晴、朝早く駅へかけつけて出立。
物みなよかれ、人みな幸なれ。
八時から一時まで白船居、おちついてしんみりと別盃を酌んだ、身心にしみ入る酒だつた。
駅の芽柳を印象ふかく味はつた。
白船君の歯がほろりと抜けた、私の歯はすでに抜けてしまつてゐる。
汽車からバスで室積へ、五時から十時まで、大前さん水田さんと飲みながら話す。
十二時の汽船(商船愛媛丸)で宇品へ、春雨の海上の別離だ。
船中雑然、日本人鮮人、男女、老人子供、酒、菓子、果実、――私は寝るより外なかつた。
庵はこのまゝ萠えだした草にまかさう
そして私は出て行く、山を観るために、水を味ふために、自己の真実を俳句として打出するために。
・ふりかへる椿が赤い
其中庵よ、其中庵よ。
 わかれて春の夜の長い橋で
 木の実すつかり小鳥に食べられて木の芽
・こんやはこゝで涸れてゐる水

 三月廿三日

おくれて九時ちかくなつて宇品着、会社に黙壺君を訪ねる、不在、さらに局に澄太君を訪ね、澄太居に落ちつく、夫妻の温情を今更のやうに感じる。
樹明、白船、せい二、清恵、澄太、等、等、等、春風いつもしゆう/\だ、ぬくい/\うれしい/\だ。
夜は親しい集り、黙壺、後藤、池田、蓮田の諸君。
近来にない気持のよい酒だつた、ぐつすりと眠れた。

 三月廿四日

おこされるまで睡つてゐた、夢は旅のそれだつた。
春雨、もう旅愁を覚える、どこへいつてもさびしいおもひは消えない。……
澄太君が描いてくれた旅のコースは原稿紙で七枚、それを見てゐると、前途千里のおもひにうたれる、よろしい、歩きたいだけ歩けるだけ歩かう。
青天平歩人――清水さんの詩の一句である。
しぜんに心がしづみこむ、捨てろ、捨てろ、捨てきらないからだ。
放下着――何と意味の深い言葉だらう。
澄太君の友情、いや友情といつてはいひつくせない友情以上のものが身心にしみる。……

夕方から、澄太君夫妻と共に黙壺居の客となる、みんないつしよに支那料理をよばれる、うまかつた、鶩の丸煮、鯉の丸煮、等、等、等(わざ/\支那料理人をよんで、家族一同食べたのは嬉しい)。
澄太居も黙壺居もあたゝかい、白船居も緑平居も、そして黎々火居も、…

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