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秋旻
しゅうびん
作品ID48464
著者原 民喜
文字遣い新字旧仮名
底本 「普及版 原民喜全集第一巻」 芳賀書店
1966(昭和41)年2月15日
入力者蒋龍
校正者伊藤時也
公開 / 更新2013-04-20 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 一人の少年は硫酸を飲んで、袴を穿いて山に行き松に縊ったが、人に発見されて、病院で悶死した。一人の少年は友達と夜行列車に乗ってゐて、「この辺は単線か、複線か。」と尋ねてゐたが、一寸の隙にブリッヂから飛込んで昏倒し、その上を別の列車が轢いて行った。もう一人の少年は、「今夜は見ものだよ。」と謎のやうなことを云ってゐたが、その夜彼の部屋の窓には何時までも煌々と燈が点いてゐて、翌朝ガスでやられてゐた。――次々に奇怪な死に方が彼等の周囲で起ったので、次第に凄惨な気分が彼等を圧しかけた。
 三人は巫山戯ながら的のない散歩を続けてゐたが、とうとう道に迷って何処へ出るのやら見当がつかなくなった。すると何時の間にか空の半分が妙に明るく、半分が暗澹とした、秋の不思議な光線の配合があった。さむざむと霧ふアスファルトのむかふに、明るい賑やかな一角がぽつんと盛り上ってゐて、ともかく、そこには憩へる場所がありさうだった。



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