えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

棉の花
わたのはな
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「普及版 原民喜全集第一巻」 芳賀書店
1966(昭和41)年2月15日
入力者蒋龍
校正者伊藤時也
公開 / 更新2013-05-01 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より


 十歳の時の夏、構造は川端の小母の家で暮した。小母は夕方、構造を連れて畑のなかを通って、或る家の風呂へ入らして貰ひに行くのだった。湯気で上気した小母の顔が湯気の中の電燈と一緒に彼の瞳に映ったりした。帰りは月が出てゐて、畑には棉の花が咲いてゐた。
 或る日、母が来て、久し振りで見た母の顔は懐しかったが、もういい加減で家へ帰らないかと誘ひ出すと、構造は顔を顰めて駄々を捏ねた。それを二人の女は面白いことのやうに笑った。

 今度東京を離れて千葉海岸の借家へ移ると四坪の庭と風呂桶が附いてゐた。それで風呂桶を買って据ゑ、庭には何か蒔かうかと思った。何時か妻が棉売りから棉を買った時、一つまみの棉の種を貰ったのを想ひ出した。彼はそれを尋ねてみた。しかし、妻は割烹着のポケットのなかに、いろんな書きつけなどと一緒に入れてゐたのだが、何処へやったのかもう憶ひ出せなかった。



えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko