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酸漿
ほおずき
作品ID48484
著者原 民喜
文字遣い新字旧仮名
底本 「普及版 原民喜全集第一巻」 芳賀書店
1966(昭和41)年2月15日
入力者蒋龍
校正者伊藤時也
公開 / 更新2013-04-26 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 結婚式の二時間前、彼女は畳に落ちてゐた酸漿を拾って鳴らして捨てた。
 朝、夫が役所へ出て行くと、彼女はもう一度寝床に潜り込んで、昼過ぎに起きた。それから煎餅を噛りながら新聞を読んだ。それから夕方まで鏡台に対ってぽかんと暮した。

 夫が出張で三日も帰らないと、彼女はふらりと街へ出掛ける。夜遅くそこの窓のカーテンには男の影が大きく映ったりした。

 彼女の生んだ赤ん坊が這ひ出す頃、その子は、ほほづきを拾って食べて、呼吸がつまって死んだ。子を失った彼女は奇妙に若返った。若くなるためには、人知れぬ工夫がされた。しかし何よりもいけないのは、他人が彼女の齢を註文よりも老けてみることだった。さうした場合、彼女は癇癪が起きて、咽喉が塞がりさうになった。



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