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私の洋画経歴
わたしのようがけいれき
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「猿々合戦」 要書房
1953(昭和28)年9月15日
入力者鈴木厚司
校正者伊藤時也
公開 / 更新2010-03-03 / 2014-09-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 幼少七歳の頃なりし、ジゴマなる探偵映画当時は活動大写真を見て、動く写真と、その白いコルセットのスカートをながくひきずる令嬢がすごい顔をした大悪漢に、いまやあわやという大危険に小さな心臓を震るわし本気になって心配をし、ニック・カーターという名探偵が現われてこれを救うという大スリルに心を踊らしたのが、そもそも泰西活動大写真を見た最初であった。
 それから小学校の二、三年の頃であったでありましょう。「名金」なる連続映画を麻布の六本木にあるささやかな活動小屋でラムネと塩せんべいをかじりながら、感極まるとピイピイ口笛をふいて拍手喝采をしたものである。子供心にヒロイン、キチイに扮する、グレース・カーナドに恋のほのほを燃し夢うつつであった。それに現れる二枚目フランシス・フォード、絶対に強力な快漢ロローに扮するエデー・ポロなぞが黄金貨幣を真二つに切って、その行方をさがし、二つ合えば宝のかくし場所がわかるという大活劇がくり広げられて行く。僕はボール紙に金紙をはり、それにわからぬアルハベットをつづり二つに切って近所の悪たれ坊主連中と名金ごっこをしたのはなつかしい想い出である。グレース・カーナド出演映画は「獣魂」なぞ陸続と現れ、冒険心に満ちていた少年の僕を人生の楽しみとまでしみ込ましたのである。
 その頃、グレス・ダーモンドという眼の美しい日本人好みの女優の「赤い目」という連続映画が登場し、二巻目の終りに両眼が恐ろしいまでクローズ・アップされ、その眼球だけ赤色がルビーのように染められていたのには驚異であった。
 幸い両親が新しい物好きで、僕の映画愛好に、むしろ賛成であったのは僕の大なる幸福であったのであろう。
 次に僕を真髄まで映画ファンにしてしまったのは、パール・ホワイトである。先日もベティ・ハットンの「ポーリンの冒険」で私はなにか涙をもよおすほど自分の若き少年の頃を思い起して胸のあつくなるおもいであった。そのほほの色まで感じさせる明眸のパールが耳かくしの金髪に胸のふくらみを白いブラウスに包み、腰のあたりがキュウーと張ち切れそうな長靴姿には、僕はあの真暗な客席でほほを赤らめ面はずかしげに上気してスクリーンのパールに気もそぞろであったのです。それは「拳骨」という、シャルトン・ルイズの演ずるハンケチで顔を覆い、いつも拳骨をにぎる兇悪な悪漢とその乾分におそわれるパールの運命やいかに? と次週へのお楽しみという連続映画に引かされ毎週毎週通いつめるのは、まるで恋人とのあいびきのような甘い雰囲気であったのです。パール物は続々と上映され、ついには映画ファンである両親につれられ、当時映画劇場としては立派な赤坂溜池の葵館へと出かけ、赤坂の名妓なぞと二階の特等席でアイス・クリーム(ラムネではありませんぞ)を喰べながら徳川夢声さんの名説明で、「運命の指輪」「鉄の爪」「呪いの家」に心を踊らした想い出…

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