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エキゾチックな港街
エキゾチックなみなとまち
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「猿々合戦」 要書房
1953(昭和28)年9月15日
入力者鈴木厚司
校正者伊藤時也
公開 / 更新2010-02-28 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 佐世保へいらっしゃるんですって、佐世男が佐世保にいくなんて、なんかおかしいですね――、オホホホホ。あなたさまは日本人でしょう、オホホそれならお行きにならない方がお幸せですわ。……雲仙の旅館の女中は手を振った……。日本人は相手にされませんよ、靴をみがこうとなさっても駄目駄目。
 オホホホ、女の子ですって、それこそ鼻もひっかけませんよ。それは北海道の果からも美人がおしかけておりますけれど、あきらめなさった方が、およろしいですよ、なにも佐世保ばかりが女の都といったわけでもありますまい、オホホホ。この雲仙にも、温泉でみがかれた玉の肌の女がおりますわよ――それに高い山の上ですもの霞をのんで生きているような美しい仙女ですよ。およし遊ばせ。ほんとの美人はこのような仙境に、がいしておるものですわ、オホホホ。お買物ですって駄目! 駄目! 日本語ではなんにも買えませんよ、タクシー、とんでもない、およし遊ばせったら、悪いことは申しあげませんよ。私は佐世保にいったことはありませんが、お客様がそのように申しているのを聞いたばかりなのですよ。およし遊ばせったら、およし遊ばせ。
 いやもう驚いた。この様子では、せっかく九州の旅をしているのに、佐世保だけがまるで、遠くはるかなる外国のような気がして、志気大いにくじけるではありませんか。
 佐世保のステーションに着いたのは黄昏時で、なるほど、下車する人を見ると米軍の士官や水兵達が大きなトランクや袋なぞをかついで、赤帽達が大わらわである。この調子で行くと雲仙の女中さんの話もまんざら嘘でもないらしいぞ。ちょいと心細くなって外へ出ると、タクシーがあった。恐る恐る話しかけて見ると、
 O・K・オーケー。
 と、ドアーを開けてくれた。やれやれとシートに腰をおろして外をながめると、軍港時代は知らぬがなるほど街は白い西洋菓子のように色どられ、ネオンのチューブがまるで青空の動脈のように色々大空にそびえ、あちらの岡、こちらの山肌とまるでグリーンに白、赤い屋根、白血球と赤血球が群り集ったような異国風景、星条旗がへんぽんとひるがえっている。地球上も時々大きな変化が起って、色々な色彩にぬりかえられるものよ、長生きすれば、するほどまったく、とまどいをしてしまう。
「運転手さん、ここは日本人をまるで相手にしないといわれて来たのだが、ほんとかい」
 と、聞くと、
「いや、そんなことはないですが、今はこのように、上陸する兵隊がまるで少くなったので、日本人でも結構相手にしますよ。盛りの時は、キャバレーなんかよりつけられませんな、何しろ外貨獲得で一生懸命でしたもの、日本人なんか相手にしませんでしたよ。しかしこの頃はこの通りでさァ――」
 と、なんとなくしょげ切っている。山水楼という旅館に旅装をといたのだが、一風呂あびて部屋に帰ると、アアッと驚いた。スーツケースもスケッチブック…

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