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涼亭
りゃんちん
副題――序に代へて――
――じょにかえて――
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2008-04-09 / 2014-09-21
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

蒲留仙 五十前後の痩せてむさくるしい容をしている詩人、胡麻塩の長いまばらな顎髯を生やしている。
李希梅 留仙の門下、二十五、六の貴公子然たる読書生。
葉生  浮浪人、二十六、七の背のひょろ長い髪の赤茶けた碧い眼の青年。
村の男
旅人  甲、乙。

山東省[#挿絵]川の某山村の街路にある涼亭。それは街路の真中に屋根をこしらえ、左右の柱に添えて石台を置いて腰掛けとしたもので、その中を抜けて往来する者が勝手に休んでいけるようになっている。その涼亭の一方は山田で、稲や黍を作り、一方は人家になって十軒ばかりの泥土の小家が並んでいて、前には谷川の水の流れている小溝があり、後には屋根越しに緑葉の間から所どころ石の現われている丘が見えている。それは康熙年間の某夏の午後のことである。涼亭には蒲留仙が腰をかけて、長い煙管をくわえながらうっとりとして何か考えている。その蒲留仙の右側の石台の上には、壷のような器に小柄杓を添えて、その下に二つ三つの碗を置き、それと並べて古い皮の袋と煙管を置いてあるが、その壷には茶が入れてあり、皮袋には淡巴菰を詰めてある。そして左側には硯に筆を添え、それと並べて反古のような紙の巻いたのを置いてある。また足許には焼火したらしい枯枝の燃えさしがあって、糸のような煙が立っている。蒲留仙はこうして旅人を待っていて、茶を勧め、淡巴菰を喫まして、牛鬼蛇神の珍らしい話をさせ、それを「聊斎志異」の材料にしているところである。

そこへ村の男が一人上手から来て涼亭の中へ入って来る。竹で編んだ笠を着けて、手の付いた笊に瓜のような物を入れ、それを左の肱にかけているが、蒲留仙を見つけると皮肉な眼付をする。
村の男 先生と張公の媽媽じゃ、辛抱がええわえ。今年でもう六年じゃ、毎日毎日、あの坂の上で、張公の帰りを待ってるが、なんぼ待ったところで、水に溺れて死んだ者が戻るもんか。気違いじゃからしかたがないが、考えてみりゃ、可哀いそうなもんじゃ。……時に先生、近頃は面白い話が聞けますか。
蒲留仙はやっと眼を開けたが、村の男の顔は見ずにめんどくさそうにいう。
蒲留仙 ……うむ、……うむ、話もね……。
そして淡巴菰の火が消えているのに気が注いたようにして、足許の燃えさしに吸いつけて喫む。村の男はそのさまをじろじろと見る。
村の男 ほんとに学者という者は、辛抱がええな。あの赤い星が、雷のような音をして東へ飛んだ年にも、ここにおったというじゃありませんか。蝗が雲のようにこの村へやって来た時にも、先生はここにおりましたな。久しいもんじゃ、辛抱がええ。張公の媽媽の気違いも、先生の足許にゃ寄れないぞ。
蒲留仙 うむ……、うむ……、張公の媽媽か。
蒲留仙は雁首の大きな煙管に淡巴菰を詰めかえながら相手にならないので、村の男は歩きだした。
村の男 やれ、やれ、御苦労なことじゃ。茶と淡巴菰の接待をして、蛇の…

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