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成仙
せいせん
作品ID4925
著者蒲 松齢
翻訳者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-09-15 / 2014-09-21
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 文登の周生は成生と少い時から学問を共にしたので、ちょうど後漢の公沙穆と呉祐とが米を搗く所で知己になって、後世から杵臼の交といわれたような親しい仲であったが、成は貧乏であったから、しょっちゅう周のせわになっていた。そのうえ歯も周がうえであったから、成は周の細君を嫂さんと呼んで尊敬し、季節季節にはかならず来て一家の人のようにしていた。そうしているうちに周の細君がお産をした後で暴に死んでしまったので、周はその継へ王姓の女を聘った。成はすこしささわりがあって来なかったので、王氏にはまだ逢っていなかった。
 ある日王氏の弟が姉をみまいに来たので、周は居間で酒盛をしていた。そこへ成が遊びに来たので家の者がとりついだ。周は喜んで迎えようとしたが、礼儀の正しい成は居間へ通るのは失礼にあたるからといって入らずに帰っていった。周は席を表座敷へ移して、成を追っかけていって伴れ還り、やがて席についたところで、人が来て、
「今、別荘の下男が村役人につかまって、ひどく打たれております。」
 といった。それは黄という吏部の官にいる者の牛飼が、牛を曳いて周の家の田の中を通ったのがもとで、周の家の下男といいあらそいになり、それを走っていって主人に告げたので、主人の黄吏部は周の家の下男を捉えて村役人に送った。それがために周の家の下男が打たれて責められることになったのであった。周はその故を聞いて大いに怒った。
「黄の牧猪奴、よくもそんなことをしやがった。おやじは俺のお祖父さんにつかえていたくせに。すこしよくなったと思って、人をばかにしやがる。」
 周は忿がむらむらとこみあげて来て、どうしても押えることができないので、黄吏部の家へいこうとした。成はこれをおしとめていった。
「強いものがちの世の中に、黒も白もないじゃないか。それにさ、今日の官吏は、たいがい強盗で、槍や弓をひねくりまわさない者はないじゃないか。あいてにならないがいいよ。」
 周はそれでも聴かずにいこうとした。成はかたく諌めてはては涙さえ見せたので、周もよすことはよしたが怒りはどうしても釈けなかった。それがためにその夜は睡らずに寝がえりばかりして朝になった。そこで周は家の者を呼んでいった。
「黄は、俺をばかにしたから仇だが、それは姑くおいて、村役人は朝廷の官吏で、権勢家の官吏じゃない。もし争う者があるなら双方を調べるべきだ。それを嗾けられた狗のように、一方ばかり責めるとは何事だ。俺は牛飼を訴えて、村役人がどういうふうに処分するかを見てやるのだ。」
 家の者も主人のいうことが道にかなっているので、止めないばかりか是非いくがよかろうといってすすめた。そこで周の考えはきまった。周は訴状を持って村役人の所へいった。村役人は訴状をひき裂いて投げつけた。周はますます怒って村役人を罵倒した。村役人は慚じると共に恚って周を捕縛して監獄へ繋いだ。
 周…

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