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其中日記
ごちゅうにっき
副題10 (十)
10 (じゅう)
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「山頭火全集 第八巻」 春陽堂書店
1987(昭和62)年7月25日
入力者小林繁雄
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-12-03 / 2014-09-21
長さの目安約 84 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   自戒三則
一、物を粗末にしないこと
一、腹を立てないこと
一、愚痴をいはないこと
   誓願三章
一、無理をしないこと
一、後悔しないこと
一、自己に佞らないこと
   欣求三条
一、勉強すること
一、観照すること
一、句作すること

 一月一日 晴――曇。

明けましておめでたう。
九時帰庵、独酌。
賀状とり/″\。
午後、樹明居へ、御馳走になる、来客数人、なか/\賑やかであつたが、うるさくもあつた。
留守中、敬君来庵、すみませんでした。
うたゝ寝、覚めると暮れてゐた。
酒もうまいが餅もうまい、飯もありがたいが水もありがたい。
夜おそく八幡連中来庵、星城子、鏡子、井上、杉山さんの四人。
豚を鋤焼して飲む、ごろ寝したのは三時を過ぎてゐたらう。

 一月二日 曇。

朝寝して、起きるとまた酒、豚汁はおいしかつた、さすがに井上さんはコツクだつたらしい。
堤さん、後を追うて来た、お土産として銘酒二本。
夕方、みんないつしよにタクシーで湯田温泉に遊ぶ、M旅館で賑やかに会食、近来になくハシヤいだ。
十時の汽車に乗るべく、またタクシーで、――私はたうとう愚劣きわまる酒乱患者となつてしまつた!

 一月三日 曇。

茫々たり、漠々たり、昏々たり、沈々たり。
庵中独坐。
自己清算しろ、自己破産か! 自己決算か!
おのづからなる自壊作用!
――生きてゐたくない、死にたい――それも執着だ。
この寂寥、この憂欝、この虚無。
たへがたし、其中一人酔つぱらふ。
生きてゐる真実、食べることの真実、あはれ/\。
天地人一切の有象無象!
酒、酒、餅、餅、新年、新年。
老醜。――

 一月四日 曇。

やゝ落ちつく。
午後、樹明君来庵、酒一杯、飯一杯。
夕方、敬君来庵、一升樽さげて。
同道して湯田へ、一浴して戻る、酒が残つてゐるのでそれだけ飲む。
熟睡安眠、夢も見なかつた。

 一月五日 晴。

日本晴である、昼寝。
樹明君来訪、例の如く酔うてそれからそれへ、――馬鹿、阿呆。――

 一月六日 雨――曇。

陰欝な一日。
餅があるので、鼠が来てゐるお正月(いつもはゐない、ゐつかない)。
考へる、――強く生きよ。

 一月七日 曇。

或る青年来庵、間もなく樹明君来訪、三人でのんびり飲む。
咲いた、咲いた、机上の梅が、床の水仙が。
一人となればまた沈欝な一夜。

 一月八日 曇。

あたゝかい冬だが、昨日今日はさすがに寒い。
閑居読書。

 一月九日 曇。

一切放下着。――
転身一路。――
泥中の魚、辛うじて水中の魚!
自他共に醜悪愚劣。
酒なし、煙草なし、石油なし、むろん小遣なんか一銭もなし。

 一月十日 曇。

雪、初雪である。
自然にかへれ、自己にかへれ、人間にかへれ。
午後、暮羊君来庵、つゞいて樹明君来庵、牛肉の鋤焼で飲みはじめる、それから彷徨する。
苦しかつた、心臓が破裂し…

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