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甲州郡内妖怪事件取り調べ報告
こうしゅうぐんないようかいじけんとりしらべほうこく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「井上円了 妖怪学全集 第6巻」 柏書房
2001(平成13)年6月5日
初出「東京朝日新聞」1894(明治27)年5月8、9、11、12日
入力者門田裕志
校正者Juki
公開 / 更新2011-03-29 / 2014-09-16
長さの目安約 18 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 一昨日、哲学館において井上円了氏の演ぜし妖怪取り調べ報告の大要を聞くに、左のごとし。
 昨年十一月中旬より、山梨県北都留郡(すなわち、いわゆる郡内)大目村、杉本永山氏の宅に一大怪事現出す。今、その怪事の概略を記さんに、その本体は形もなく影もなく、目もって見るべからず、手もって触るるべからざるをもって、なにものの所為たるを知るべからざれども、空中に一種奇怪の声ありて、明らかにこれを聴くことを得べし。しかして、その声はあたかも人の口笛のごとき響きにて、よく五音をいい分け、人と問答会話するをもって、なんぴとにてもこの怪声に対し問いを発せば、いちいちその答えを得という。この声、最初の間は夜分のみ聞こえしが、後には昼夜を分かたず聞こゆるに至りしかば、このこと、いつしか近村の一大評判となり、人々みなこれを奇怪とし、実際にこれを聴かんと欲して、その家に争い集まる者、前後踵を接し、一時は門の内外、人をもってうずむるほどなりき。かくて、この群衆のうちより、だれにても問いを発する者あるときは、怪声のこれに応じて答うること、すこぶる明瞭にして、なんぴとにもみな聞こえ、ただにその声の発源と思わるる所より四、五間の距離において、明らかに聴き取られしのみならず、隣家まで聞こゆるほどにて、その状あたかも人が談話するに異ならず。ただ、その人の言語と相同じからざるは、その音調が口笛のごとく聞こゆる点のみ。されば、これを聴ける群衆は、いかにもしてその声の発源を知らんと欲し、種々の方法をもって、その位置、方向を指定せんと試みたれども、あるいは家の内にあるがごとく、また外にあるがごとく、あるいは上に聞こえ、また下に聞こえ、右に聞こゆるかと思えば、また左に聞こえ、人々おのおのその聴くところの位置を異にし、ついにその目的を達することあたわざりき。かつ、この怪声はひとりその音調の奇怪なるのみならず、種々の怪事これに伴って現出するあり。
 今、仮にその怪事を、言語上に現ずるものと、行為の上に現ずるものとの二種に分かちてこれを略陳せんに、まず言語の上においては、第一に、その口笛のごとき怪声が、よく人の年齢をいい当つることなり。例えば、なんぴとにてもその怪声に対し、わが年齢はいくばくぞと問わんに、あやまたずその数を告ぐるがごとし。これ、あに怪事にあらずや。第二に、その声が他所もしくは他家に起こりし出来事を察知して人に告ぐることあり。例えば、某家に今かくかくのことありと告ぐるとき、その家に至りて問い合わすに、果たしてそのことありという。これ、あに奇怪にあらずや。第三に、その声、よく他人の心中を洞察し、これを言い当つるに、あやまちなしという。これまた、奇怪といわざるべからず。第四に、その声、よく他人の一身上もしくは一家の上に、まさに来たらんとする吉凶禍福を予言すという。これまた、奇怪といわざるべからず。第五に、…

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