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嬰寧
えいねい
著者
翻訳者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-09-18 / 2014-09-21
長さの目安約 23 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 王子服は[#挿絵]の羅店の人であった。早くから父親を失っていたが、はなはだ聡明で十四で学校に入った。母親がひどく可愛がって、ふだんには郊外へ遊びにゆくようなこともさせなかった。蕭という姓の家から女をもらって結婚させることにしてあったが、まだ嫁入って来ないうちに没くなったので、代りに細君となるべき女を探していたが、まだ纏まっていなかった。
 そのうちに上元の節となった。母方の従兄弟に呉という者があって、それが迎いに来たので一緒に遊びに出て、村はずれまでいった時、呉の家の僕が呉を呼びに来て伴れていった。王は野に出て遊んでいる女の多いのを見て、興にまかせて独りで遊び歩いた。
 一人の女が婢を伴れて、枝に着いた梅の花をいじりながら歩いていた。それは珍らしい佳い容色で、その笑うさまは手に掬ってとりたいほどであった。王はじっと見詰めて、相手から厭がられるということも忘れていた。女は二足三足ゆき過ぎてから婢を振りかえって、
「この人の眼は、ぎょろぎょろしてて、盗賊みたいね。」
 といって、花を地べたに打っちゃり、笑いながらいってしまった。王はその花を拾ったが悲しくて泣きたいような気になって立っていた。そして魂のぬけた人のようになって怏怏として帰ったが、家へ帰ると花を枕の底にしまって、うつぶしになって寝たきりものもいわなければ食事もしなかった。
 母親は心配して祈祷したりまじないをしたりしたが、王の容態はますます悪くなるばかりで、体もげっそり瘠せてしまった。医師が診察して薬を飲まして病気を外に発散させると、ぼんやりとして物に迷ったようになった。母親はその理由を聞こうと思って、
「お前、どうしたの。お母さんには遠慮がいらないから、いってごらんよ。お前の良いようにしてあげるから。」
 といって優しく訊いても黙って返事をしなかった。そこへ呉が遊びに来た。母親は呉に悴の秘密をそっと聞いてくれと頼んだ。そこで呉は王の室へ入っていった。王は呉が寝台の前に来ると涙を流した。呉は寝台に寄り添うて慰めながら、
「君は何か苦しいことがあるようだが、僕にだけいってくれたまえ。力になるよ。」
 といって訊いた。王はそこで、
「君と散歩に出た日にね。」
 というようなことを前おきにして、精しく事実を話して、
「どうか心配してくれたまえ。」
 といった。呉は笑って、
「君も馬鹿だなあ、そんなことはなんでもないじゃないか。僕が代って探してみよう。野を歩いている女だから、きっと家柄の女じゃないよ。もし、まだ許嫁がなかったなら、なんでもないし、許嫁があるにしても、たくさん賄賂をつかえば、はかりごとは遂げられるよ。まァそれよりか病気をなおしたまえ、この事は僕がきっと良いようにして見せるから。」
 といった。王はこれを聞くと口を開けて笑った。
 呉はそこで王の室を出て母親に知らせた。母親は呉と相談して女の居所…

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