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妖怪談
ようかいだん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「井上円了 妖怪学全集 第6巻」 柏書房
2001(平成13)年6月5日
入力者門田裕志
校正者Juki
公開 / 更新2012-07-30 / 2014-09-16
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 エー、今晩は、臨時のお好みに従いまして、御注文のとおり妖怪談を演説することになりました。なにぶん世間では、妖怪学は私の専有物であるかのごとく評判いたしまして、いずれへ参りましても、話を頼むということになると、どうか妖怪の談をしてもらいたいと申します。先年のことであります。私がある所へ参りました。その要件というのは、すなわち哲学館大学の資金募集のために出張いたしましたのにもかかわらず、「寄付話はやめて、どうか妖怪談をして願いたい」というのでございます。そこで私は、「今回、余が参りましたのは、演説をやるために来たのではありませぬ。寄付を願うために参りましたのだから」とお断りをいたしました。ところが彼らが言うには、「ここで妖怪談をして下さるならば、全員こぞって寄付に御賛成申すが、もし話して下さらぬならば、われわれも不本意ながら、御寄付にも賛成はできませぬ」と申したことがございますが、妖怪談というものは、さほどまでにおもしろいものではありませぬから、この辺のことはあらかじめ御承知を願っておきます。
 さて、妖怪と申しますると、なにか幽霊かのように思われますが、決して一つや二つのものではありませぬ。その種類といったら百も二百もあります。まず、私が調べたところのもののみでも四百とおりもありますから、とても一つ一つこれをお話ししておるわけには参りませぬ。まあ、そのうちのおもしろいのを一つ二つお話しいたしましょう。それにしても、皆様の御希望もありましょうから、それを伺ってと思って、諸君の希望を問うたのであります。ところが十人十種、ある人は天狗の談を、ある人は狐の話を、またある人はお化けのお話を、ある人は霊魂のと申されまして、なにを話してよいやら一向分かりませぬから、皆様の御注文はいれられませぬ。全体、天狗のことは当地が本家本元でありますから、ただ今お話をいたしませんでも、定めし諸君らの方がくわしく御承知のことでありましょう。これはお預りといたしておきまして、なにか狐についての実験談か、あるいはまた、幽霊の話でもいたしてみようかと思います。
 さてまた、この霊魂いな幽霊を話そうやには、どうしても無限絶対ということを話さんければなりませぬ。この無限絶対を話そうというのは、はなはだ困難のこと(話せぬわけではないが、心のもとからして話さねばなりませぬから、一朝一夕のことにはまいりませぬ)であります。なお、幽霊を話すには足りませぬ。どうしても霊魂不滅ということを語らねばなりませぬ。ところが、この霊魂不滅ということは哲学において研究する事柄であって、最も難解のものであります。およそ困難といっても、これほど至難なものはありませぬ。もし、この霊魂が分かりましたならば、現在この世界にあるところの学間はみな解決したと申しても、過当の言とは申されませぬ。学問という学問は多くあるけれども、研究に…

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