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連城
れんじょう
著者
翻訳者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-09-27 / 2014-09-21
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 喬は晋寧の人で、少年の時から才子だといわれていた。年が二十あまりのころ、心の底を見せてあっていた友人があった。それは顧という友人であったが、その顧が没くなった時、妻子の面倒を見てやったので、邑宰がひどく感心して文章を寄せて交際を求めて来た。そして二人が交際しているうちに、その邑宰が没くなったが、家に貯蓄がないので家族達は故郷へ婦ることができなかった。喬は家産を傾けて費用を弁じ、顧の家族と共に顧の柩を送っていって、二千余里の路を往復したので、心ある人はますますそれを重んじたが、しかし、家はそれがために日に日に衰えていった。
 その時史孝廉という者があって一人の女を持っていた。女は幼な名を連城といっていた。刺繍が上手で学問もあった。父の孝廉はひどくそれを愛した。連城の刺繍した女の刺繍に倦んでいる図を出して、それを題にして少年達に詩をつくらした。孝廉はその詩によって婿を択ぼうとしていた。喬もそれに応じて詩をつくって出した。
 その詩は、
慵鬟高髻緑婆娑
早く蘭窓に向って碧荷を繍す
刺して鴛鴦に到って魂断たんと欲す
暗に針綫を停めて双蛾を蹙む
 というのであった。
 また連城の刺繍の巧みなことをほめて、
繍線挑し来たりて生くるを写すに似たり
幅中の花鳥自ら天成
当年錦を織るは長技に非ず
倖に廻文を把りて聖明を感ず
 としてあった。連城はその詩を見て喜んで、父に向ってほめた。孝廉は喬は貧乏だからといって相手にしなかった。連城は人に逢うと喬のことをほめ、そのうえ媼をやって、父の命だといつわって金を贈って喬のくらしを助けた。喬はひどく感じていった。
「連城こそ自分の知己である。」
 喬は連城のことばかり考えて食にうえた人のようであった。間もなく連城は塩商の子の王化成という者と許嫁になった。喬はそこで絶望してしまったが、しかし夢の中ではまだ連城を思慕していた。
 それから間もなく連城は胸の病気になって、それがこじれて癒らなかった。インドの方から来た行脚僧があって自分から孝廉の家へ出かけていって、その病気を癒すことができるといったが、ただそれには男子の胸の肉を一切れ用いて薬を調合しなくてはならなかった。孝廉は人を王の家へやって婿に知らした。婿は笑っていった。
「馬鹿爺親、俺の胸の肉を[#挿絵]らすつもりか。」
 使が返って婿のいったことを伝えた。孝廉は怒って人に話していった。
「肉を割いてくれる者があれば、女を婿にやろう。」
 喬はそれを聞くと孝廉の家へいって、自分で白刃を出して、胸の肉をそいで行脚の僧に渡した。血が上衣から袴を濡らした。僧は薬とその肉を調合して三つの丸薬を作って、日に一回ずつ飲ましたが、三日してその丸薬がなくなると、連城の病気は物をなくしたように癒ってしまった。孝廉は約束を践んで喬に連城をめあわそうと思って、先ずそのことを王の方に知らした。王は怒って官に訟…

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