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おばけの正体
おばけのしょうたい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「井上円了 妖怪学全集 第5巻」 柏書房
2000(平成12)年5月10日
入力者門田裕志
校正者岡村和彦
公開 / 更新2016-06-05 / 2016-03-04
長さの目安約 151 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

緒言


 明治三十一年のむかし、『妖怪百談』を著し、つぎにその「続編」を作りしが、望外にも世間より歓迎せられ、再三再四、版を重ぬるに至りたるも、数年前に残本全く尽き、久しく購読を謝絶しきたれり。その後さらに再版せんと思いしも、本書の内容が古人の書を引き、古代の話を伝えたるもの多ければ、そのまま再版するもおもしろからずと考え、絶版のまま今日に至れり。
 しかるに、この最近二十年間、全国周遊中、各所において妖怪の実験談を直接に聞知せるもの、または研究会員より妖怪の新事実を報告せるもの、または地方の有志者より新聞雑報の切り抜きを寄送せるもの、および自ら実地につき探知せるもの等、数百項の多きに達したれば、これを収集選択し、また旧著中、明治維新後に起こりし妖怪事件十余項を抜粋し、合わせて百三十項を得、新たに『おばけの正体』の書名の下に上梓するに至る。その期するところは、家庭および小学にありて、妖怪に迷える児童に読ましめんとするにあれば、文章は言文一致を用い、事項は児童の了解し得る程度を計り、平易簡明を主とせり。つまり、家庭の御伽話に資せんとするの微意なり。読者、願わくはその意を了せられんことを。
 妖怪と迷信とは密接の関係を有し、ほとんど妖怪の八、九分どおりは、迷信より起こると断定して可なるほどなり。ゆえに、本書中に迷信を併記せるも、そのほかになお迷信に関する事項はすこぶる多ければ、他日、さらに「迷信集」を編述する心算なり。
 また、今日の学理をもって解説し難き、いわゆる真の不思議と称すべき事項も夥多あれば、他日、別にこれを集成して「真怪論」を発行する予定なり。そのこともあわせてここに予告す。

大正三年六月
演述者自ら記す
[#改丁]

おばけの正体


第一項 妖怪はあるかないかについて
 世間には妖怪があるともいい、ないとも申して、議論が一定しておらぬ。妖怪ありの論者は、なにもかもみな妖怪ときめて、毫も疑いを起こさぬ。これに反して妖怪なしの論者は、ただいちずに、神経である、妄覚である、誤伝である、詐偽である、迷信であると速断してしまう。余の考えにては、いずれも極端にして信ずるに足らぬ論と思う。どうしても実際上、十分に探検して後に、その有無を判定せなければならぬ。そこで余は、数十年前より妖怪研究会を設け、現在世間にある妖怪を実地について調査したのである。
 すべてむかし話に伝わり、あるいは古き書物にかいてある怪談は、もとより信ずることができぬのみならず、今日調査する手掛かりがないから、それよりも、今日世間に起これる実例について研究する方が確実である。その中に原因の不明なるものも多いが、また明瞭になったのもたくさんある。今、ここに妖怪の有無を判定する前に、原因の分かりたる事実談を集めて、世の中へ紹介しようと思う。しかしてその事項は、なるべく明治維新後に起こった出来…

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