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促織
そくしょく
著者
翻訳者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-10-06 / 2014-09-21
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 明の宣宗の宣徳年間には、宮中で促織あわせの遊戯を盛んにやったので、毎年民間から献上さしたが、この促繊は故は西の方の国にはいないものであった。
 華陰の令をしている者があって、それが上官に媚びようと思って一疋の促織を献上した。そこで、試みに闘わしてみると面白いので、いつも催促して献上さした。令はそこでそれをまた里正に催促して献上さした。市中の游侠児は佳い促織を獲ると篭に入れて飼い、値をせりあげて金をもうけた。邑宰はずるいので、促織の催促に名を仮って村の戸数に割りあてて金を取りたてた。で、一疋の促織を催促するたびに、三、四軒の家の財産がなくなった。
 ある村に成という者があった。子供に学芸を教える役であったが、長いこと教わりに来る者がなかった。その成は生れつきまわりくどいかざりけのない男であったが、ずるい邑宰の申したてによって里正の役にあてられた。成は困っていろいろと工夫して、その役から逃れようとしたが逃れることができなかった。それがために一年たらずですくなかった財産がなくなってしまった。ちょうどその時促織の催促があった。成はおしきって村の家家から金を取りたてもしなければ、それかといって自分で賠償金を出すこともできなかった。成は困りぬいて死のうとした。細君がいった。
「死んで何の益があります。自分でいって捜すがいいじゃありませんか。万一見つからないとも限りませんよ。」
 成はなるほどと思って、竹筒と糸の篭を持って朝早く出かけていって日が暮れるまで捜した。塀の崩れた処や草原へいって、石の下を探り、穴を掘りかえして、ありとあらゆることをしてやっと二、三疋の促織を捕えたが、皆貧弱なつまらない虫であるから条件にかなわなかった。邑宰は先例に従って厳重に期限を定めて督促した。成はその期限を十日あまりも遅らしたので、その罰で百杖敲かれて、両股の間が膿みただれ、もういって虫を捉えることもできなくなった。
 成は牀の上に身を悶えて、ただ自殺したいとばかり思っていた。その時村へ一人のせむしの巫が来て、神を祭って卜をした。成の細君は金を持って巫の所へ成の身の上のことを訊きにいった。そこには紅女や老婆が門口を塞ぐように集まっていた。成の細君もその舎へ入っていった。そこには密室があって簾を垂れ、簾の外に香几がかまえてあった。身の上のことを訊く者は、香を鼎に焚いて再拝した。巫は傍から空間を見つめて代って祝った。その祝る唇が閉じたり開いたりしているが何をいっているか解らなかった。身の上のことを訊こうとしている者は、それぞれ体をすくめるように立って聴いていた。と、暫くして簾の内から一枚の紙を投げだした。それにはその人の思うことをいってあったが、すこしもちがうということがなかった。成の細君は前の人がしたように銭を案の上に置いて、香を焚いて拝んだ。物をたべる位の間をおいて、簾が動いて紙きれが飛ん…

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