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蓮花公主
れんかこうしゅ
著者
翻訳者田中 貢太郎
文字遣い新字新仮名
底本 「聊斎志異」 明徳出版社
1997(平成9)年4月30日
入力者門田裕志
校正者松永正敏
公開 / 更新2007-10-09 / 2014-09-21
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 膠州の竇旭は幼な名を暁暉といっていた。ある日昼寝をしていると、一人の褐色の衣を着た男が榻の前に来たが、おずおずしてこっちを見たり後を見たりして、何かいいたいことでもあるようであった。竇は訊いた。
「何か御用ですか。」
 褐衣の人はいった。
「殿様から御招待にあがりました。」
 竇は訊いた。
「殿様とはどんな方です。」
 褐衣の人はいった。
「すぐ近くにおられます。」
 竇はそれについていった。褐衣の人はぐるりと路を変えて、牆をめぐらした家の旁を通って案内していった。楼閣の建ち並んでいる処があった。褐衣の人はそこを折れ曲っていった。そこにはたくさんの人家が軒を並べていたが、どうしてもこの世の中のものではなかった。そこにはまた宮廷に事えている官吏や女官などがたくさん往来していたが、皆、褐衣の人に向って訊いた。
「竇さんは見えましたか。」
 褐衣の人は一いち頷いた。不意に一人の貴い官にいる人が出て来て、竇を迎えたがひどく恭しかった。そして堂にあがって竇はいった。
「もともとお目みえしたことがないから、拝謁しておりませんのに、どうした間違いかお迎えを受けましたが、私にはその故が解りかねます」
 貴い官にいる人はいった。
「王様が先生が清族で、そのうえ代代徳望のあるのをなつかしく思われて、一度お目にかかってお話したいと申しますから、御足労を煩わしたしだいです。」
 竇はますます駭いて訊いた。
「王はどうした方です。」
 貴い官にいる人はいった。
「暫くすると自然にお解りになります。」
 間もなく二人の女官が来て、二つの旌を持って竇を案内していった。立派な門を入っていくと殿上に王がいた。王は竇の入って来るのを見ると階段をおりて出迎えて、賓主の礼を行った。礼がおわると席についた。そこには饗宴の筵が設けてあった。殿上の扁額を見ると桂府としてあった。竇は恐縮してしまって何もいうことができなかった。王はいった。
「お隣になっておるから御縁が深い。どうかゆっくりうちくつろいでくださるように。」
 竇は王のいうなりになって酒を飲んだ。酒が三、四まわると笙歌が下から聞えて来たが、鉦や鼓は鳴らさなかった。その笙歌の声も小さくかすかであった。やや暫くして王は左右を顧みて、
「朕が一言いうから、その方達に対句をしてもらおう。」
 といって一聯の句を口にした。
「才人桂府に登る、四座方に思う。」
 竇がそこでそれに応じていった。
「君子蓮花を愛す。」
 すると王がいった。
「蓮花はすなわち公主の幼な名だ。どうしてこんなに適合したであろう。これはどうしても夙縁だ。公主にそう伝えてくれ、どうしても出て来て君子にお目にかからなければならないと。」
 暫くたってから珮環の音がちりちりと近くに聞えて、蘭麝の香をむんむんとさしながら公主が出て来た。それは十六、七の美しい女であった。王は公主に命じて竇を…

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