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よめいり荷物
よめいりにもつ
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「燈火節」 月曜社
2004(平成16)年11月30日
入力者竹内美佐子
校正者林幸雄
公開 / 更新2009-10-11 / 2014-09-21
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 今から四十年あるひは五十年ぐらゐ前の嫁入支度はたいてい千五百円から二千円ぐらゐの金で充分間に合つたのである。その二千円を今の金に計算してみるとかなりの物かも知れないが、とにかく娘が三人あつたとして、二千円づつ六千円ぐらゐならば、親たちもどうにか出すことが出来たらしい。
 およめさんの荷物は、民間では、五荷の荷物がごく普通であつた。三荷では少しさびしく、七荷ではちいつとばかり贅沢だつたが、だいじな一人娘なぞには親がきばつて七荷にすることが多かつた。三荷の荷物では、油単をかけた箪笥一つ、吊台二つ。一つの方の吊台には夜具二人前を入れたもえぎ唐草の風呂敷づつみ、座ぶとん五枚、行李二つ位、もう一つの吊台には机や鏡台その他身のまはりの小物をのせる、これは沢山の物があるほどお嫁さんは調法するが、親の方が痛いから、まづ間にあへばよろしいといふところ。五荷の荷物だと、油単をかけた箪笥二つ、長持一つ、吊台二つである。長持には夫婦揃の夏冬の夜具、座ぶとん、夫婦用座ぶとん、夫婦用と客用の枕、蚊帳、たんぜん二人分が入れられる。吊台には机、本箱、鏡台、姿見、針箱、くけ台、衣桁、下駄箱、えもん竹、日がさ、雨傘、洗面器、物さし、裁ち板、張板、火のし、鏝、たらひ二つ(重なるように大小の物)、めざまし時計、大小のお重箱、硯ばこ、そろばん、膳椀、茶椀、湯のみ、お勝手用皿の大小、手あぶり火鉢二個(長火鉢は花婿の家で買つたのではなかつたかしら、今思ひ出せない)このほかカバンと行李もある。これだけだと一つの吊台にはのせきれないから、もう一つの方の台にはみ出すかもしれない。しかしそちらの吊台には、松竹梅のかざりのついたお祝ひ品が山のやうに戴せられるから、そちらも一ぱいになる。二つの吊台にこれだけ戴せるのは中々な骨折である。衣類をすこし余計持つてゐる娘はとても二つの箪笥では入れきれないから、不断着の箪笥をあとから送ることもある。当日の荷物に箪笥の数を多くすれば、五荷では間に合はず七荷になるから、それだけかつぐ人間の数も増える。それであとから送るといふやうな智慧を出すこともあつて、そんな智慧は大てい仲人が考へ出すことになつてゐた。
 七荷の荷物だとずつとゆつくり荷物がはいつた。箪笥三棹、長持二つ、吊台二つであるが、この場合長持一つで、吊台を三つにする人もあつた。琴、三味線もむろんこの吊台にのせる。花聟の家がせまい場合には長持を二つ置くだけの場席がないから、広すぎる古い家庭でない限り、花聟の家の方でたいていは二つの長持は辞退するのが多かつた。一つの長持でも、新婚の小さい家では、長持が玄関に置かれてひどくきうくつに見えることが多かつた。
 七荷の荷物までは普通の嫁入り荷物であつたが、貴族とか大店のお嬢さんのよめいり荷物は、十三荷があたり前の事になつてゐた。(九荷といふ荷物はなかつた。九は苦に通じるから嫌はれた…

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