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活動写真
かつどうしゃしん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「梵雲庵雑話」 岩波文庫、岩波書店
1999(平成11)年8月18日
初出「趣味之友」第24号、1917(大正6)年12月
入力者小林繁雄
校正者門田裕志
公開 / 更新2003-02-14 / 2014-09-17
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 日本の活動写真界の益々進歩隆盛に赴いて来るのは、私のような大の活動写真好きにとっては誠に喜ばしい事である。私は日本製のものは嫌いで見ないから一向知らないが、帝国館や電気館あるいはキネマ倶楽部などの外国物専門の館へは、大概欠かさず見に行く。しかして回を追って、筋の上にも撮影法の上にも、あらゆる点において進歩しつつあるのを見るにつけて、活動写真も茲十年ほどの間に急速の進歩をしたものだと感心せずにはおられない。
 一番初め錦輝館で、そもそも活動写真というものを興行した事がある。その時は、海岸へ波が打上げる所だとか、犬が走る所だとかいったような、誠に単純なもののみのフィルムで、随って尺も短いから、同じものを繰り返し繰り返しして映写したのであった。しかしながら、それでさえその時代には物珍らしさに興を催したのであった。今日の連続物などと比較して考えて見たならば、実に隔世の感があるであろう。
 ところで、かつて外人の評として、伊太利製のものはナポリだとかフローレンだとかローマとかを背景にするから、クラシカルなものには適当で、古代を味うには頗る興味があるが、新らしい即ち現代を舞台とする筋のものでは、やはり米国製のものであろうといっているけれども、米国製品にしばしば見るカウボーイなどを題材にしたものは、とかくに筋や見た眼が同一に陥りやすくて面白味がない。けれども探偵物となるとさすがに大仕掛で特色を持っている。しかしこれらの探偵物は、ただほんのその場限りの興味のもので、後で筋を考えては誠につまらないものである。
 三、四年前位に、マックス、リンダーの映画が電気館あたりで映写されて当りをとった事がある。ちょっとパリジァンの意気な所があって、今日のチャプリンとはまた異った味いがあった。チャプリンはさすがに米国一流の思い切った演出法であるから、それが現代人の趣味に適ってあれだけの名声を博したのであろう。
 それで近頃では数十巻連続ものなどが頗る流行しているが、これは新聞小説の続きもののように、後をひかせるやり方で面白いかも知れないが、やはり一回で最後まで見てしまう方がかえって興味があるように思われる。数十巻連続物などになると、自ずと筋の上にも場面の上にも同じようなものが出来て、その結局はどれもこれも芽出たし/\の大団円に終るようで、かえって興味がないようである。そこへ行くと、伊太利周遊だとか、東印度のスマトラを実写したものだとかいう写真は、一般にはどうか知らないが、真の活動通はいつも喜ぶものである。
 よく端役という事をいうが、活動写真には端役というべきものはないように思われる。どれもこれも総てが何らかの意味で働いているように思われる。それから室の装飾の如き物は総てその場に出ているものに調和したものが、即ち趣味を以って置かれている。決してお義理一遍になげやりにただ舞台を飾るというだ…

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