えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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国会図書館の窓から
こっかいとしょかんのまどから
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「中井正一全集 第四巻 文化と集団の論理」 美術出版社
1981(昭和56)年5月25日
初出「ブックス」1949(昭和24)年3月号
入力者鈴木厚司
校正者染川隆俊
公開 / 更新2009-10-14 / 2014-09-21
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 日射しの暖かい南向きの窓に、開くともなしに、美しい装釘の本をひもどく、といった、読書のよろこび、「閑」というこころもちの深い厳しさ、こんな世界から、だんだん遠ざかりつつある。
 どこへ行くのであろう。時々こんなこころもちになる。私のいる部署は実に五百人の人々が、タイプライターの機銃のような音、電話、交渉、書類の交錯の中で朝八時半から五時の夕暮まで、一分の暇もなしに働きつづけているのである。しかも、それが読書の組織の内部機構にほかならないのである。
 議会への立法サービス、大小となく議員からの質問、または調査の依頼、早いのは二、三日の中に回答をしなければならない。さらに各省その他に二十四の支部図書館があって、全体で三百八十万冊の書籍に対して相互研究の便宜の道と、各図書の綜合リードすなわちユニオン・カタローグの課題が待っているのである。一般国民に対しても、三十六万の現存図書の自由回覧のサービス、および質問に対する調査業務が課せられている。また全国の図書館のユニオン・カタローグは二十五ヵ年計画で進められている。これが完成のあかつきは、日本国中の図書館のカードが本館に集まることとなるのである。さらに全国の図書館にかわって、図書のカードをつくって、それを印刷してそれを全国の図書館に流し作業をすることも任務の一つとなっている。この四月までに出版後一月で日本の出版図書のカードが印刷され得るところまで到達する予定である。
 学術会議の図書館も支部図書館となることで、全学術文献は雑誌所載の内容を、小さくまとめて摘録して、間断なく報告する任務が、来年度から私たちの課題となってきたのである。国際業務部では、外国との図書交換の事務、ことにスミソニアンの交換事務を一手に引き受けて、外国からの書籍を各大学に送ることと、各大学からきたのを、外国の各国に送る事業をやっている。七十五坪の一階にいっぱいの書類にうずまって人々は動いている。
 レコードも納本形式で入りつつあるので、三月からレコード・コンサートがおこなわれることとなってきた。次はフィルムの収集が来年度のプランとなることであろう。納本制度は二年目の今年度になって、ようやく月額一千冊を越えるにいたったので、大いに意を強くしているのである。新聞も、全新聞をのこす意気でもって、やがてマイクロフィルム、すなわち一頁を一コマの映画フィルムに収めて保存することにしている。貴重な書籍は、このマイクロフィルムに取って、拡大器で見るようにして、米国製の撮影機でその活動に入ってきているのである。
 こんなに書いていってみると、もはや本を読むということは、浄机明窓で静寂境の楽しみどころではなくして、私にとっては一つの大工場である。その工場の一技師長にしかすぎないのである。物ごとが巨大になりすぎている。しかも、その一つ一つが避けるべからざる必然性をもって…

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