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旅日記
たびにっき
副題02 昭和十三年
02 しょうわじゅうさんねん
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「山頭火全集 第八巻」 春陽堂書店
1987(昭和62)年7月25日
入力者小林繁雄
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2010-05-30 / 2014-09-21
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 五月廿八日 廿九日 澄太居柊屋。

やうやく旅立つことが出来た(旅費を送つて下さつた澄太緑平の二君にこゝで改めてお礼を申上げる)。
八時出発、朝飯が足らなかつたから餅屋に寄つて餅を食べる、それから理髪する(ずゐぶん長う伸びてゐた)。
四辻駅で、折よくやつて来た汽車に乗る、繁村の松原、佐波川の流、あの山この道、思ひ出の種ならぬはない。
富海下車、一杯ひつかけて歩く、椿峠を越えて湯野へ、湯野温泉は改修されて立派になつてゐる、一浴一杯、戸田駅へ急ぐ、S君の事が想ひだされてたまらなかつた。
四時の汽車で徳山へ、いつもかはらぬ白船君夫妻の厚情に甦つたやうな気がした、豪雨の中を櫛ヶ浜まで歩いて、そこからまた汽車で柳井に下車したけれど適当な宿が見つからないので夜行で広島へ、三時半着、待合室で夜の明けるのを待ちかねて澄太居、いや、これからは柊屋へ押しかけた、澄太君が寝床からニコ/\起きて来た。
うまい酒だつた(酒そのものも文字通りの生一本だつた)、あゝ極楽々々!
午後、奥さもいつしよに出かける、新天地でニユース映画を観る、帰途、小野さんの宅に立寄る。
晩酌のよろしさ、しばらく話して、ぐつすりと寝た。

 五月三十日 梅雨日和。

句稿整理。
螻子居を訪ねる、それから黙壺君に逢ふ、マア/\ヤア/\! それで万事OKだ! うれしいな。
黙壺君と同道して再び螻子居へ、そして三人で澄太君へ、とぶ螢、それをとらへるみんなのすがた、私は酔うて、たゞもう愉快であつた。
それから、黙壺君と二人ぎりになり、新天地を飲み歩いた、泥酔してしまつた、黙壺君すみませんでした!

 五月三十一日 曇、黙壺居。

朝酒のうまさよ。
高等学校の郊汀さんを訪ふ、初対面であるが、どちらもノンベイなので、新天地へ出かけて飲みまはる、中国新聞社で黙壺君に落ち合ひ、三人元気よく江波の山陽茶屋(とでもいはうか)まで押しだして、うまい料理を食べた、そして、それから、……それから、そして、……地極々々!

 六月一日 晴、螻子居。

身心混沌として我と我を罵るのみ、――といつたやうなていたらく!
螻子居の厄介になる、昼酒、晩酌、読書、雑談、散歩、螻子君と共に一日一夜たのしく暮らした。
今日は野の川で水浴した、多少身心がさつぱした。

 六月二日 柊屋、晴、曇。

そんなことはどうでもよい、澄太君夫妻の温情につゝまれてゐた。
S氏K氏の邸宅に押しかけて短冊を売りつけた、あゝ不快、不快、不快。……
  澄太居雑詠
よい酒でよい蛙でほんに久しぶり
雨ふる古い古い石塔が青葉がくれに
青葉をへだててお隣は味噌でも摺るらしい音
柊のあを/\としておだやかなくらし
朝の鏡の白い花のかげ
蛙ひとしきりそれからまた降る
   □
海は曇つて何もない雨
つんばくろよいつしよにゆかう

 六月三日 晴。

七時出立、己斐まで電車、そこから歩…

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