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国号の由来
こくごうのゆらい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「先住民と差別 喜田貞吉歴史民俗学傑作選」 河出書房新社
2008(平成20)年1月30日
初出「日本精神読本」新潮社、1937(昭和12)年11月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2011-09-06 / 2014-09-16
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

一 緒言

 昭和九年初頭の第六十五回帝国議会において、頭山満氏ほか数氏の名を以て、国号制定に関する請願なるものが提出せられた。我が国は大日本帝国なのか、日本国なのか、またこれを口にするに或いはニッポンと云い、或いはニホンと云い、外国人はジャパンとも、ヤポンなどとも云っているが、この際国家において正確なる呼称を定められたいと言うにあったらしい。一大帝国の国号がハッキリしないという事は、考えてみれば妙な次第ではあるが、外国人とも交渉が少く、また主として漢字に依拠した時代にあっては、それでもさして不都合を感ずる事なく、千数百年来それで間に合って来たのであった。しかし今日ではもはやそれでは許されぬ。漢字にたよらず、もっぱら自国の文字でそれを仮名書きにする西洋人にとっては、ニッポンとニホンとは明らかに別の名である。ことに各自自国の慣例によって、ジャパン・ヤポンなどと呼ぶ場合においては、一層物が面倒になる。さきに米国では外国よりの輸入商品に対して、その製造地を英語を以て記入すべしとの規定から、「ニッポン製造」の記入ある我が物貨の輸入を拒絶し、或いはこれに対し罰金を課すとかのこともあったと聞く。かかる次第であってみれば、ここにその制定の急務が叫ばれるに無理はない。
 実を云えば我が帝国が東方海上に孤立して、諸外国と交渉を有しないような時代には、国号というべき程のものの必要は無かった筈で、神武天皇大和平野を平定して、ここに帝国の基を定め給い、それより皇威四方に発展して、次第にその大をなすに至ったのであったから、自然とヤマトの名が、その国家を指示する場合に用いられるようになっていたのである。しかしそれは勿論口称だけのことで、未だ文字を以てこれを表わすことは無かった。しかるに三韓服属以来、かの国人は古来支那人使用の文字のままに、これを「倭」と号し、或いは「大倭」と敬称する例となり、我が国またこれに倣って、その文字を在来の呼称なるヤマトの語に当てたのであったが、しかもそれは我が国号としては、適当の文字では無い。
 三韓人はまた一方に、我が国が東方日出処にあるが故に、これを日本と称し、我が国でもそれを枕言葉として、「日の本のヤマト」なる称呼が用いられた。かくて推古天皇の使いを隋に遣わし給うに及んで、初めてその義にとって、「日出処」または東の文字を用い給うたが、しかしこれまた以て我が国号として定まったものではない。その後「日の本のヤマト」なる枕言葉の「日の本」が、直ちにヤマトの語を表わす文字として使用せられ始めて、唐との交通に際してもその文字が我が国号として用いられ、唐人はそれを自国の字音のままに音読して、ニッポンの名が始めて世界的に認められたものであったと解せられる。かくて我が国でも、いつしかその文字に重きを置きてこれを音読し、さらにその発音を和らげてニホンと呼び、双方並び行われ…

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