えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

サンカ者名義考
サンカものめいぎこう
副題――サンカモノは坂の者
――サンカモノはさかのもの
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「先住民と差別 喜田貞吉歴史民俗学傑作選」 河出書房新社
2008(平成20)年1月30日
初出「民族と歴史 第四巻第三号」1920(大正9)年6月号
入力者川山隆
校正者門田裕志
公開 / 更新2011-09-11 / 2014-09-16
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

 京都あたりでは一種の浮浪民を、サンカまたはサンカモノと呼んでいる。東山や鴨川堤などに臨時の小屋を構えて住んでいるものは、そのやや土着的性状を具えて来たものと思われるが、それでもやはり戸籍帳外のものとしてしばしば警察官から追い立てを喰って他に浮浪せねばならぬ運命を免れない。その或るものは数年前から警察や役場のお世話になって、今は在来の或る「特殊部落」に接した地に借屋住まいをなし、別に一つの部落をなして戸籍にも編入せられ、日雇その他の労働者として立派に一人前の帝国臣民たる資格を具えることになっているが、それでもなお「旧部落民」からは、「あれはサンカじゃ」と云って、その仲間扱いにはなっていないらしい。
 京都あたりではサンカという類のものを、自分の郷国阿波などでは、オゲ或いはオゲヘンドという。尾張・三河あたりではポンとかポンスケ・ポンツクなど云っているそうである。かの四国・九州あたりで勧進・禅門西国など呼ばれる仲間にも、この徒がけだし少くないらしい。その現に竹細工などをして漂泊しているものに対しては、その職業によって、箕直し或いは竹細工などと呼ぶ地方もある。柳田君によれば、ノアイとも、川原乞食とも呼ぶことがあるという。またその種類によって、セブリ・ジリョウジ・ブリウチ・アガリなど呼んでいることもあるという(人類学雑誌「イタカ及びサンカ」)。
 かく地方により種類によって、種々の名前があるにしても、近来はサンカという名称で、広く彼らを総括する様な風潮になっているかの如くみえる。そしてその文字には、普通に「山窩」と書く様になっている。これは大正三年頃の大阪朝日の日曜附録に、鷹野弥三郎氏の「山窩の生活」と題する面白い読物が連載せられたのが、余程影響を与えているものらしい、それ以来地方の新聞などでも、浮浪漂泊もしくは山住まいの凶漢悪徒の記事などの場合には、往々「山窩」の文字を用うることになっている様に見受けられる。しかし彼らが山の穴住まいをなすことはむしろ稀な場合であって、柳田君も既に言われた如く、勿論この宛字は意義をなさぬ。よしや穴住まいをしているものについての称呼だとしても、それをむつかしく「山窩」など書いて、それが俗称になったとは思われない。
 サンカのことの学界において論議せられたのは、自分の見た限りでは柳田君の「イタカ及びサンカ」(人類学雑誌明治四十四年九月、十一月、同四十五年二月)が初めであるらしい。同君は職人尽歌合にあるイタカとこのサンカとを併せ叙して、彼らと売笑婦との関係に及び、一種の娼婦をヨタカと云いソウカと云うは、イタカ及びサンカの語と関係があるらしいと説いておられる。そしてそのサンカの語そのものについては、「本義不明なり」というのみにて、その説明を試みておられぬが、その名称の由来はすこぶる古いものと解しておられるらしい。すなわち平安朝末期の散木奇歌…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko