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古寺巡礼
こじじゅんれい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「古寺巡礼」 岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年3月16日
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2011-01-01 / 2014-09-21
長さの目安約 290 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

改版序

 この書は大正七年の五月、二三の友人とともに奈良付近の古寺を見物したときの印象記である。大正八年に初版を出してから今年で二十八年目になる。その間、関東大震災のとき紙型をやき、翌十三年に新版を出した。当時すでに書きなおしたい希望もあったが、旅行当時の印象をあとから訂正するわけにも行かず、学問の書ではないということを標榜して手を加えなかった。その後著者は京都に移り住み、曾遊の地をたびたび訪れるにつれて、この書をはずかしく感ずる気持ちの昂じてくるのを経験した。そのうち閑を得てすっかり書きなおそうといく度か考えたことがある。しかしそういう閑を見いださないうちに著者はまた東京へ帰った。そうしてその数年後、たしか昭和十三四年のころに、この書が、再び組みなおすべき時機に達したとの通告をうけた。著者はその機会に改訂を決意し、筆を加うべき原稿を作製してもらった。旅行当時の印象はあとからなおせないにしても、現在の著者の考えを注の形で付け加えることができるであろうと考えたのである。しかし仕事はそう簡単ではなかった。幼稚であるにもせよ最初の印象記は有機的なつながりを持っている。部分的の補修はいかにも困難である。従って改訂のための原稿は何年たってもそのままになっていた。そのうちに社会の情勢はこの書の刊行を不穏当とするようなふうに変わって来た。ついには間接ながらその筋から、『古寺巡礼』の重版はしない方がよいという示唆を受けるに至った。その時には絶版にしてからすでに五六年の年月がたっていたのである。そういうわけでこの書は今までにもう七八年ぐらいも絶版となっていた。
 この間に著者は実に思いがけないほど方々からこの書に対する要求に接した。写したいからしばらく借してくれという交渉も一二にとどまらなかった。近く出征する身で生還は保し難い、ついては一期の思い出に奈良を訪れるからぜひあの書を手に入れたい、という申し入れもかなりの数に達した。この書をはずかしく感じている著者はまったく途方に暮れざるを得なかった。かほどまでにこの書が愛されるということは著者として全くありがたいが、しかし一体それは何ゆえであろうか。著者がこの書を書いて以来、日本美術史の研究はずっと進んでいるはずであるし、またその方面の著書も数多く現われている。この書がかつてつとめたような手引きの役目は、もう必要がなくなっていると思われる。著者自身も、もしそういう古美術の案内記をかくとすれば、すっかり内容の違ったものを作るであろう。つまりこの書は時勢おくれになっているはずなのである。にもかかわらずなおこの書が要求されるのは何ゆえであろうか。それを考えめぐらしているうちにふと思い当たったのは、この書のうちに今の著者がもはや持っていないもの、すなわち若さや情熱があるということであった。十年間の京都在住のうちに著者はいく度も新しい『古…

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