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京都のごりの茶漬け
きょうとのごりのちゃづけ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人の食卓」 グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日
初出「星岡」1932(昭和7)年
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2010-02-02 / 2014-09-21
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 京都のごりは加茂川に多くいたが、今はよほど上流にさかのぼらないといないようである。桂川では今でもたくさん獲れる。ごりは浅瀬の美しい、水の流れる河原に棲息する身長一寸ばかりの小ざかなである。
 ごりといっても分らない人は、はぜのような形のさかなと思えばいい。腹に鰭でできたような吸盤がついていて、早瀬に流されぬよう河底の石に吸いついている。
 ごりには大小さまざまの種類があるが、ここに登場するごりは小さなごりで、一寸以上に大きくならぬようである。それが証拠に、小さなくせに卵を持っている。身は短小なれど非常に美味いさかなである。
 京都の川肴料理では、赤だし(味噌汁)椀に、七尾入れることを通例としている。こんな小さなものを七尾入れて、立派な京名物が出来るのだから、その美味さが想像できるだろう。従って値段も高い。たくさん獲れないからである。とても、佃煮なんかにして食べるほど獲れないのだ。にもかかわらず、佃煮にして食べようというのであるから、ごり茶漬けは天下一品のぜいたくといわれるのである。
 今では、生きたのが一升二千円見当もするだろう。これを佃煮にすると、かさが減るから、ぜいたくにおいて随一の佃煮である。
 ごりの佃煮とは要するに、高いごりを生醤油で煮るのである。それを十尾ばかり熱飯の上に載せて、茶をかけて食べるのである。
 昔からごりの茶潰けは有名なものだが、おそらく京都でも食べたことのある人は少ないであろう。京都以外の人では、名前も存在も知らぬ人が多いかも知れない。
 食通間では、ごりの茶漬けを茶漬けの王者と称して珍重している。しかし、食べてみようと思えば、大してぜいたくなものではない。なぜなら、高いといったところで、一椀十尾ばかりですむことであるから、金にすればなんでもない。ただ五尾か七尾で、名物吸いものにしているのを目前に見ているので、思い切って佃煮にする勇気がしぶるだけのことである。もったいないが先に立って、やっぱり味噌汁にして、平凡に食べてしまうようになる。
 このごりは、どこの川にでもいるようだが、京都のは小さくて、粒が揃っている。
 篤志の方は、京都に行かれた節にでも、料理屋に命じて、醤油で煮つめさせ、一つ試みられてはいかが。これさえ食べれば、一躍茶漬けの天下取りになれるわけである。
 ついでに茶漬けとは別な話であるが、京都には「鷺知らず」という美味い小ざかながある。



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