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鍋料理の話
なべりょうりのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「魯山人の食卓」 グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日
初出「星岡」1934(昭和9)年
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2010-02-06 / 2014-09-21
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 冬、家庭で最も歓迎される料理は、なべ料理であろう。煮たて、焼きたてが食べられるからである。
 なべ料理では、決して煮ざましを食べるということはない。クツクツと出来たての料理を食べることが、なによりの楽しみである。だから、なべ料理ほど新鮮さの感じられる料理はない。最初から最後まで、献立から煮て食べるところまで、ことごとく自分で工夫し、加減をしてやるのであるから、なにもかもが生きているというわけである。材料は生きている。料理する者は緊張している。そして、出来たてのものを食べるというのだから、そこにはすきがないのである。それだけになんということなく嬉しい。そして親しみのもてる料理といえよう。
 しかし、材料が鮮魚、鮮菜という活物が入った上での話である。入れるものがくたびれていたのでは、充分のものはできない。これは、なべ料理にかぎらぬ話であるが、念のため申し添えておく。
 家庭でやるなべ料理は、原料はこれとこれだけと、決っているわけではない。前の晩にもらった折詰ものだとか、買い置きの湯葉だとか、麩だとか、こんにゃくだとか、あるいは豆腐を使おうと、なんでも独創的に考案して、勝手にどんなふうにでもやれるのである。「なべ料理」のことを、東京では「寄せなべ」というが、上方では「楽しみなべ」ともいっている。なぜ「楽しみなべ」というかといえば、たいの頭があったり、蒲鉾があったり、鴨があったり、いろいろな材料がちらちら目について、大皿に盛られたありさまが、はなやかで、あれを食べよう、これを食べようと思いめぐらして楽しみだからである。
「楽しみなべ」という名称は、実によくあてはまっている。しかし、「寄せなべ」というのは、なんだか簡単すぎて感じのよい名前ではないと思う。「なべ料理」は先にもいった通り、材料がいろいろあるし、それを盛る盛り方にもなかなか工夫がいるのである。この点を注意しないで、ぞんざいに扱うと、いかにも屑物の寄せ集めみたいになってしまう。
 関東の風習は、薄く平らに並べるようであるが、あまり感心しない。ふぐみたいなものは大皿に並べざるを得ないが、それは特殊なことであって、「なべ料理」の材料を盛るのは、深鉢にこんもりと盛るのがよろしい。材料はさっき述べた通り、なんでもよい。ただ感心しないのは貝類である。貝類は、ほんのわずかならかまわないが、多く使うと、どうも味を悪くするキライがある。貝類は結局だしをわるくして、ほかのものの味まで害するからいけない。また、貝類はさかなや肉にも調和しない。外国料理は、シチュー、カレー、スープの中によく貝を使っているが、マッチしていないのが多い。これは、外国には貝類も魚類も少ないので重宝がっているせいだろうが、料理の味をこわしているのが大方だ。
 それとは逆に、日本では貝類がいくらでも取れるので、ぞんざいに使用しているようだ。貝類を多量に使用…

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