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鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
かじかざわゆきのよばなし(こむろさんのごふう、たまござけ、くまのこうやく)
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」 筑摩書房
2001(平成13)年8月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-08-18 / 2014-09-21
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 これは三題噺でございます。○「ひどく降るな、久しいあとに親父が身延山へ参詣に行つた時にやつぱり雪の為めに難渋して木の下で夜を明したとのことだがお祖師様の罰でもあたつてゐるのかしら、斯う降られては野宿でもしなければなるまい、宿屋は此近所にはなし、うム向うに灯が見えるが人家があるのだらう。雪を踏み分け/\それに近よりまして○「御免なさいまし。女「どなたです。○「私は身延山へ参詣に参つた者ですが、雪の為めに難渋して宿屋もなにもないやうでございますが、まことに何うも御厄介でございませうが今晩たゞ夜を明す丈けでよろしうございます、何うか御厄介になりたいものでございますが、如何でございませう。女「それはお気の毒さまですねえ、お入んなさいまし、別に御馳走と云ふものはありませんが、そこは開きますからお入んなさい。○「はい有難うございます。笠を脱つて雪を払ひ内に入ると、女「囲炉裡に焚火をしてお当んなさいまし、お困んなすつたらう此雪では、もう此近は辺僻でございまして御馳走するものもございません。○「何ういたしましてお蔭様で助かりましてございます。女「そこに木の葉がありますよ、焚付がありますから。囲炉裡の中に枯木を入れフーツと吹くとどつと燃え上りました。その火の光りでこゝに居ります女を見ると、年頃は三十二三服装は茶弁慶の上田の薄い褞袍を被て居りまして、頭髪は結髪でございまして、目もとに愛嬌のある仇めいた女ですが、何うしたことか咽喉から頬へかけて突いた様な傷がございます。女「そこへ草鞋を踏込んでお当んなさいまし。○「有難うございます……お内儀さんえ、間違つたら御免なすつて下さいまし、人違ひと云ふことはございますから、あなたはお言葉の御様子では此の鰍沢のお生れではないやうでございますな。女「さうですよ、江戸で生れたんですよ。○「江戸は何の辺でございますか。女「生れは日本橋の近所ですが観音様のうしろに長い間ゐたことがありますよ。○「へえ観音様のうしろに……あなたは吉原の熊蔵丸屋の月の戸華魁ぢやアございませんか。女「おや何うしてわたしを御存知です。男「華魁ですかどうもまことにお見受け申したお方だと存じましたが、只今はお一人ですか。女「いえ配偶者があるんですよ。男「左様でございますか、私は久しい以前二の酉の時に一人伴があつて丸屋に上り、あなたが出て下すつて親切にして下すつた、翌年のやはり二の酉の時に久し振りで丸屋へ上ると、あなたは情死なすつたと云ふことで、あゝ飛んだことをした、いゝ華魁であつたが惜しいことをしてしまつた、それからあなたの俗名月の戸華魁と書いて毎日線香を上げて居りますが夢の様でございます。女「実はね情死を為そこなひました、相手は本町の薬屋の息子さんで、二人とも助かりまして品川溜へ預けられて、すんでに女太夫に出る処をいゝあんばいに切り抜けてこゝに来てゐますが。男「左様でござい…

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