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大仏餅。袴着の祝。新まへの盲目乞食
だいぶつもち。はかまぎのいわい。しんまえのめくらこじき
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」 筑摩書房
2001(平成13)年8月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-08-18 / 2014-09-21
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 このたびはソノ三題話の流行つた時分に出来ました落語で、第一が大仏餅、次が袴着の祝、乞食、と云ふ三題話を、掲載すことに致しました。
 場所は山下の雁鍋の少し先に、曲る横丁がありまする。彼の辺に明治の初年まで遺つて居つた、大仏餅と云ふ餅屋がありました。余り美味しくはございませんが、東京見物に来る他県の方々が、故郷へ土産に持つて往つたものと見えまする。其大仏餅屋の一軒おいて隣家が、表が細い栂の面取りの出格子になつて居りまして六尺、隣りの方が粗い格子で其又側が九尺ばかりチヨイと板塀になつて居る、無職業家でございまする。表には河合金兵衛といふ標札が打つてござります。マア金貸でもして居るか、と想像致されます家、丁度明治三年の十一月の十五日、霏々と日暮から降出して来ました雪が、追々と積りまして、末には最う「初雪やせめて雀の三里まで」どころではない雀が首つたけになるほど雪が積りました。其時に俄盲目の乞食と見えまして、細竹の[#挿絵]を突いて年齢の頃は彼是五十四五でもあらうかといふ男、見る影もない襤褸の扮装で、何うして負傷を致しましたか、尻を端折つて居る膝の所からダラ/\血が流れて居りまする。ト属いて来ましたる子供が、五歳か六歳位で色白の、二重瞼の可愛らしい子でございまするが、生来からの乞食でもありますまいが、世の中の開明に伴れて、前、贅沢生計をなすつたお方といふものは、何うも零落れ易いもので。親父の膝から、血が流れるのを視て、子「お父ちやん痛いかえ、お父ちやん痛いかえ。父「アイそれは痛いワ……負傷をしたんだから……エー最う新入の乞食だからの、何処が何うだかさつぱり訳が解らないが、彼の山下の突当りの角の所に大勢乞食が居て、何故己等の縄張りの家を貰つて歩く、其処は己の方で沙汰をしなければ、貰ふところでない、といふから、私は新入の乞食で何んにも存じませぬ、と云ふのを、大勢寄つて集つて己を三つも四つも打ち倒しアがつて、揚句のはてに突飛ばされたが、悪いところに石があつたので、膝を摺剥いて血が大層出るからのう……。子「お父ちやん血が大層出るよ。父「アー大層出るか。子「アー大層流れるからね……あのね坊が摩すつて上げようか。父「まアまア何しろ斯う歇みなしに雪が降つては為方がない、此家の檐下を拝借しようか……エー最う日が暮れたからな、尚ほ一倍北風が身に染むやうだ、坊は寒くはないか。子「あいお父ちやん、坊は寒くはないけれども、お父ちやんが痛からうと思つて……。父「ン、ンー能く労つて呉れるの。子「お父ちやん摩つて上げようか。父「ンー摩つて呉れ。子「此処のところかえ……。父「あゝ……有難うよ……何うもピリ/\痛んで堪らない……深く切つたと見えて血が止まらない……モシ少々お願ひがございますがな、お軒下を少々拝借致します……就きまして私は新入の乞食でございまして唯今其処で転びましてな、足を摺破しまし…

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