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八百屋
やおや
作品ID50099
著者三遊亭 円朝
文字遣い新字旧仮名
底本 「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」 筑摩書房
2001(平成13)年8月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-08-05 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 亭「今帰つたよ。女房「おやお帰りかい、帰つたばかりで疲れて居やうが、後生お願だから、井戸端へ行つて水を汲んで来てお呉れな、夫から序にお気の毒だけれど、お隣で二杯借たんだから手桶に二杯返してお呉れな。亭「うーむ、水まで借りて使ふんだな。妻「其代りお前の嗜な物を取て置いたよ。亭「え、何を。妻「赤飯。亭「赤飯、嬉しいな、実ア今日なんだ、山下を通つた時、ぽツ/\と蒸気が立つてたから喰ひてえと思つたんだが、さうか、其奴ア有難えな、直に喰はう。妻「まア/\喫るのは後にして、早く用を仕ちまつてから、ちよいとお礼に行つてお出よ。亭「うむ。是から水を汲んで了ひ、亭「ぢアま行つて来るが、何家から貰つたんだ。妻「アノ奥のね、真卓先生の許から貰つたんだよ。亭「うむ、アノお医者か、可笑いな。妻「ナニ可笑しいことがあるものか、何だかね、お邸からいゝ熊の皮を到来したとか云つて、其祝ひだつて下すつたのだよ、だからちよいとお礼に往つてお出。亭「何てツて。妻「何だつてお前極まつてらアね、承はりますれば御邸から何か御拝領物の儀に就きまして、私共までお赤飯を有難う存じますてんだよ。亭「おせきさんを有難う。妻「お前何を云ふんだ、おせきさんぢやないお赤飯てえのだ。亭「お赤飯てえのは何だ。妻「強飯のことだよ。亭「ムー、お赤飯てえのか、さうか。妻「でね、一番終に私も宜しくとさう云つてお呉れよ。亭「己が行くのに私も宜しくてえのは可笑しいぢやないか。妻「ナニお前が自分の事を云ふのぢやない、女房も宜しくといふのだよ。亭「うむ、お前がてえのか、で何てんだ。妻「承はりますれば、何か御邸から御拝領物の儀に就いて、私共までお赤飯をお門多いのに有難う存じますつて。亭「少し殖えたなア。妻「殖えたのぢやアありアしない、当然な話だよ。亭「其様に色んな事を云つちやア側から忘れちまあア。妻「お赤飯を有難う存じますつて、一番終に女房も宜しくと云ふんだよ。亭「エヘ/\、何だか忘れさうだな、もう一遍云つて呉んねえな。妻「困るねえ、承はりますれば何か御邸から御拝領物の儀に就きまして私共までお赤飯を有難う存じます序に女房も宜しくてえんだよ。亭「え。妻「本当に子供ぢやアなし、性がないね、確りおしよ。亭「ア痛え、何をするんだ。妻「余り向脛の毛が多過るから三本位抜いたつて宜いや、痛いと思つたら些たア性が附くだらう。亭「ア痛え。妻「痛いと思つたら、女房も宜しくてえのを思出すだらう。亭「うむ、ぢやア行つて来るよ。是から衣服を着換て、奥のお医者の許へやつて参り、玄関へ掛つて、甚「お頼ウ申ます。書生「どーれ、ヤ、是はお入来なさい。甚「エヽ先生は御退屈ですか。書「別に退屈も致しちやア居ませぬが、何ですい。甚「いえ、お宅にお出なせえますかツてんで…エヘ…御在宅かてえのと間違たんで。書生「さうか、ま此方へお上り。甚「アヽお目に懸つて少々お談じ申てえ事があつて…

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