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「王の玄関」イエーツ戯曲
「おうのげんかん」イエーツぎきょく
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「燈火節」 月曜社
2004(平成16)年11月30日
入力者竹内美佐子
校正者伊藤時也
公開 / 更新2010-11-12 / 2014-09-21
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 この頃何年ぶりかでイエーツの戯曲「王の玄関」をよみ返してみた。芝居としては面白くないかもしれないと思つたが、アイルランド人である作者の心がみんなの人物のうちに映つて、天才も常識者も乞食も軍人も愉快に勝手にせりふを言つてゐる。王宮の入口だけを舞台にして、うごきの少ない芝居であるが、同作者の「鷹の井戸」「カスリン・ニ・フーリハン」がさうであるやうに、一つ一つのせりふのかげにひろがる世界があり、その世界の中に時間も動きも無限にふくまれてゐるやうに思はれる。何にしても、こんなに食べ物の事ばかり言つてゐる戯曲はほかにはないやうに思はれるから、詩人には失礼であるけれど、食べものの事を言ひたがる私の随筆の中にこれを一つはさませて頂く。
 この劇の主人公である詩人シヤナアンは国に並びない詩人で、今までは王宮の会議に軍人や法律家とならんで国事を議する一人であつた。この国初まつて以来、詩人はその権利を与へられてゐたのであるが、このごろ気の強くなつた軍人や法律家たちは、ただ単に詩を書くだけの人間が自分らと並んで国家の会議に列する資格はないとゐばり出したので、王はこの人たちの機嫌を損ふことを恐れて、詩人を会議の席から追つたのである。シヤナアンは詩がおとしめられ詩人全体の特権を取り上げられたのを憤がいして、その日から王宮の玄関に寝て絶食して死を待つのであつた。古代からこの国では人から堪へがたい侮辱をうけた時、また不当の待遇を受けた時は、その人の門に身を横たへて絶食して抗議するといふ習慣があつたのである。
 幕があくと、王宮の玄関の階段に詩人シヤナアンが寝てゐる。その側に、詩人に食べさせようとして種々のたべものを載せた卓がある。腰かけ一つ。入口に垂れたカアテンの前、階段の一ばん上の段に王が立つてシヤナアンの一ばん弟子に話しかけるところで始まる。
 よう来てくれた、お前の師匠の生命を取りとめたいと思つてお前を呼んだのだ。もう長いことはあるまい、かまどの火が揺れて消えるやうに、もうすぐ火が消えさうなのだ、王がさう言ふと、熱病でございますか、と弟子が訊く。否、自分から死を選んだので、彼は死んで抗議する積りらしい、私の玄関さきで死んでくれては、民衆が騒いで私を攻撃するだらう。王はその点を心配するのであつた。王は細かくこの三日間の話をする。弟子は、それで安心しました、古い習慣なんぞ、そのために死ぬほどの値うちはございません、私がすすめて何か食べさせませう。弱りきつてうとうとしてゐるので、王の御親切なお声が聞えなかつたかもしれません。王はいろいろな報酬を約束して退場。この時、王はその愚痴の中に詩人のことを並べて“……… His proud will that would unsettle all, most mischievous, and he himself, a most mischiev…

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