えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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刺客蚊公之墓碑銘
しかくかこうのぼひめい
副題柩に収めて東都の俳人に送る
ひつぎにおさめてとうとのはいじんにおくる
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「飯待つ間」 岩波文庫、岩波書店
1985(昭和60)年3月18日
初出「法の雷 第十三号」1891(明治24)年10月15日
入力者ゆうき
校正者noriko saito
公開 / 更新2010-05-22 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 田舎の蚊々、汝竹藪の奥に生れて、その親も知らず、昼は雪隠にひそみて伏兵となり、夜は臥床をくぐりて刺客となる、咄汝の一身は総てこれ罪なり、人の血を吸ふは殺生罪なり、蚊帳の穴をくぐるは偸盗罪なり、耳のほとりにむらがりて、雷声をなすは妄語罪なり、酒の香をしたふて酔ふことを知らざるは、飲酒罪なり、汝五逆の罪を犯してなほ生を人界にぬすむは、そもそも何の心ぞ、あくまで血にふくれて、腹のさくるは自業自得なり、子をさして母をこまらせ親を苦しめて子をなかせたる罪の、今忽ち報ひ来て我手の先に斃れたり、悟れや汝生きて桓公の血に罪を作らんよりは、死して文人の手に葬らるるにしかず、丈草かつて汝が先祖を引導す、我また汝を柩におさめて東方十万億土花の都の俳人によするものなり、何の恨みか存ぜん喝。
念仏のとぎれけり蚊をたたく声
〔『法の雷』第十三号 明治24・10・15〕



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