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共産食堂
きょうさんしょくどう
著者
翻訳者大杉 栄
文字遣い新字新仮名
底本 「大杉栄・伊藤野枝選集第1巻 クロポトキン研究」 黒色戦線社
1986(昭和61)年6月1日
入力者クロポトキン・プロジェクト
校正者浜坂邦彦
公開 / 更新2014-08-04 / 2014-09-16
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

「明日ある大都市をして、包囲またはそれに類する何等かの災禍に襲わしめよ。諸君は共産主義の思想がたちまちにして実現されんとするのを見るだろう。『パン』の問題、すなわちすべての人に食物を供給する問題が、その都市の緊急問題となって、ある個人の勤労に対する報酬などという問題は影をひそめてしまうだろう。各人の必要は、食料品の共同貯蓄に対して、各人の分け前を要求する権利となるだろう。」
 これ、経済学者等が「人はその勤労に従って報われる」という紳士閥的定則をくりかえしつつある間、無政府主義者が年来主張し来たったところである。
 今や西欧諸国は禍乱の時期に遭遇しつつある。そしてわれわれは、共産主義的組織観に向う第一歩として共産食堂の観念がいかに急速に各所に瀰漫しつつあるかを見る。
 パリにおいて、御者と自動車運転手との労働組合は、共産食堂を開始した。ポポットとは、小飲食店という意味の隠語である。勿論それは、もっともまだほんの小さな仕事には過ぎないのであるが、男と女とによって発意的に営まれたものである。その資力は乏しい。そして目下彼等のなし得るところは、毎日三百人分の昼食と夕食とを供えて、自由食事――払えるものには払ってもらい、払えないものには無代価で――を与えることである。
「もしわれわれの組合に属していない人の細君が、彼女とその子供等のために食事を求めに来たら、われわれはそれを拒むべきであろうか。」これはポポットの組織者等が、それを開始した当日、自ら問うた問題であった。そして彼等の解答は明らかにつぎのごとくであった。「むろん拒んではならぬ。イヤかえって歓迎しなければならない。われわれのなし得ることは、自由食事を求むるそれらの人々がカタリでないという何等かの証明を得ることである。」かくしてその結果、自由食事の半分は日々全然組合とは無関係の人々に与えられている。
「それなら炊出小屋じゃないか。しかしもし何かの理由の下に家でその家族等とともに食事したいと申出るものがあったらどうするか。家まで食事を運んでやるのか。」かつてある批評家等がわれわれに言った。そしてわれわれが、共産食堂は食事を分配する方法を容易に見出すであろうと答えた時、彼等えせ識者等は、この「無政府主義者の空想」をせせら笑った。
 しかるにパリのルドワイエンという著名な一料理店において、すでにこれが実行されており、そしてその飲食店が従軍者等の細君達の台所となっているということを、今日われわれはエミル・プウジエの署名の下に『社会戦争』紙上で読んだ。
 普通の料理店での常食品よりなる――すなわちスープと野菜と肉との、しかもいずれも最上の品の――二千四百人分あまりの食事が、日々供えられまたは分配されている。この料理店の中に特別室があって、それは仕事を携えて来る婦人等のために取り除けられてある。それらの婦人達は、あらゆるも…

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